台湾を代表するサウンドアーティスト・YAO, Chung-Han 姚仲涵 インタビュー

【失聲祭を続けてきたことによりオーディエンスが「どう音を聴くのか」「どう音について考えるのか」それぞれで考え理解しつつある】
>>>YAO, Chung-Han 姚仲涵

姚仲涵 YAO, Chung-Han profile
1981年台北生まれ。サウンド・インスタレーション・ライブパフォーマンスを軸としたアーティスト。YAOの作品が見せる光(蛍光灯やレーザー)と音の対話はオーディエンスの身体感覚を呼び覚ます。台北市の南海藝廊で開催される「失聲祭(Lacking Sound Festival)」のオーガナイザーの一人でもあり、失聲祭は台湾の若いアーティストに発表のチャンスを与え、より多くのオーディエンスに新しいメディアアート体験をさせている。ヨーロッパ、韓国、中国、香港、NY、日本などでもインスタレーションやパフォーマンスを行なう。日本では、NTT ICCでの「エマージェンシーズ!014」(2010)「福岡アジア美術トリエンナーレ」(2009)などに参加。



香港のとあるイベントで、YAO, Chung-Han(姚仲涵)の蛍光灯とレーザーとノイズサウンドを用いたパフォーマンスを見た。自分の視覚と聴覚と脳に絶妙な緊張感を与えられ、約30分のパフォーマンスの後には、何か素晴らしい映画を見終わったような感覚が残った。
香港で彼と話すことはできなかったが、台湾でYAOがオーガナイズしている「失聲祭(Lacking Sound Festival)」に足を運び、直接話した。こういったタイプのアーティストは、きっと真面目で無口で……、と勝手に想像していたが、実際に出会って話した彼はとても気さくでユーモアに溢れた同世代の同じアジア人だった。台湾で会ったのち、twitterやfacebookでお互いにコンタクトを取り続けた。
I saw a performance by YAO, Chung-Han(姚仲涵)which was using laser, noise sounds and fluorescent light. I got a feeling like the impressing after seeing a great movie. I talked with him at Lacking Sound Festival in Taipei. YAO is one of the organizer of LSF. I thought that such new media artist wouldn't speak a lot and usually seriously. But he has humor as well. We had talked with laughing. He is just an Asian guy and the same generation with me. We have kept to contact with twitter and facebook.

Offshoreを創刊するにあたって、最初の記事は彼のメールインタビューにしようと早い段階から決めていた。世界を股にかけるアーティストでありながら、地元台北では台北のアートシーンを盛り上げようと試みるイベントをオーガナイズし、表方としても裏方としても常に挑戦しつづける姿勢に強くひかれたからだ。Offshore最初の記事となる今回、まずは彼の活動を紹介したい。
Before preparing to establish Offshore, I have decided to interview with YAO as the first issue. He often goes abroad as an artist, and he is challenging to make a good situation for Taiwanese sound artists with organizing LSF. I want to introduce YAO, Chung-Han as the first article because I have big respect for him.

※今回のインタビューでは、YAOの回答を日本語に訳すにあたって、英語と中国語の回答両方を参照しています。英語もしくは中国語からの対訳ではございません。日本の方々に読みやすい文章にするため、意味は残したままで言葉を換えている部分があります。
*I translated his answers with English and Chinese both languages. It's not directly translation from English to Japanese. I swapped some words for Japanese people to understand easier.



──まず、YAOのアーティストとしての活動について聞かせて下さい。どのような方法で作品制作のインスピレーションを得ますか?
──First, I want to ask some questions about your works as an art performer.
When, Where, How do you get an inspiration for your installations and performances?


私の作品(インスタレーション作品もパフォーマンスも含む)は、一種の言葉にしがたい感覚を追求しています。ですが、その感覚についてまったく説明できないわけではありません。あるとき、「言語」と「芸術言語」は完全に違う構造のもとに存在する2つであるということに気づきました。「言語」から「芸術言語」、「芸術言語」から「言語」へという相互翻訳を完璧に行なうのは非常に難しい。例えば“音楽”の場合。文字や言語で人々に訴えかけることは難しいものですが、高揚するような音楽や、胸が痛くなるような音楽には、すぐに私たちを言葉にしがたい状態や感覚に陥らせる力がある。そういった言葉にしがたい感覚こそが「芸術言語」です。この感覚が、演劇、ダンス、音楽、アートなどの存在する理由だと考えています。私は、制作では私の内面にあるイメージのようなものを表現することを模索していて、その表現が達成されることを常に望んでいます。そういった内面のイメージを言説することは難しいけれど、いろんな人と分かち合いたい。なので私は言説する手段としてアートを制作しています。「どのような方法で制作のインスピレーションを得るか」という問いにはむしろ、「自分の状態や考えを説明するために作品を制作している」と答えます。私の内心や状態が、出来上がった作品の状態に近似していくんです。


我想我的創作(裝置與演出),在追尋一種感覺,一種無法言說的感覺,並不是我無法說明,而是我發現「語言」與「藝術語言」是兩種語言的系統,彼此很難完全的翻譯。比如「音樂」,我們很難用文字、語言去告訴他者,我聽了一首多麼慷慨激昂或是多麼令人心碎的音樂,我們可能會有一種語塞的狀態,我想這就是戲劇、舞蹈、音樂、藝術存在的理由。我的創作也在追尋一種我內心一直很嚮往的"樣子",難以形容,但我又樂於分享,於是藝術創作成為我傳達想法的方法。
與其說「我如何獲得靈感」,不如說我一直「想辦法訴說我的某個狀態」,更接近我的創作狀態。
I think my creations (as installations and performances), are looking for a feeling unspeakable, not because I couldn't speak for them, but I found that "language" and "art language" are under two totally different language systems, which hard to be translated completely. As for the "music," it's usually hard to tell the people literally or lingually; whatever a song we heard with Impassion or heartbreaking, we might suddenly come into an unspeakable situation, I think this is the reason why drama, dance, music and art exist. My creation is also searching for an "Imagination" that my mind yearning to achieve, it's hard to describe, but willing to share, and that's why the creation of art became a way I express.
Instead of saying "How do I get inspiration," I rather say, "trying to express some of my situation", and it would be closer to my creating status.



>>>YAO, Chung-Han "LLSP" at MLB 2011(NY)

──中国、ヨーロッパ、NY、日本など海外での展示やパフォーマンスも多くされていますが、海外での活動でどのようなことを感じますか?また、どの地域・国がアーティストとして活動しやすかったでしょうか?また、海外のアートシーンと台湾のアートシーンの違いを教えて下さい。
──How do you feel with your exhibitions or live performances in foreign country? You often go abroad, China, Europe, NY, Japan and more… Which country is the most comfortable for the artists? What is the difference on the art scene between foreign country and Taiwan?

展示やパフォーマンス、制作のやりやすさは、現地の美術館やギャラリーの協力や環境によって変わってきます。けれども、美術館やギャラリーの国や地域を越えた関係性は実はまだまだ素晴らしく整っているとは言えないと私は思います。組織の手腕にも左右されます。私が海外での活動で経験してきたものはそれぞれのプロジェクトでの個別の事案で、国や地域のシーンにつながることはまだできていません。また、海外を訪れるのは自分の制作活動や展示、パフォーマンスなどの仕事のためです。以前海外での活動がスムーズにいかなかった経験があって、実は海外では結構ナーバスになってしまって、落ち着いて現地のカルチャーを体験することができていませんね。
如果要分享我在哪一個國家展演的經驗比較舒適的話,我想這會討論到工作的部份,像是與美術館合作或是與私人畫廊合作這樣的關係,然而這樣的關係跟國家地域其實沒有很大的關聯,跟一個單位的組織能力比較有關係,因此我覺得我遇到的都是個案,我無法與國家做連結。
因為出國都是工作的關係,如果工作沒有處理好,我其實會很緊張,無法放鬆心情的去體驗當地文化。
Speaking to which country is the most comfortable for my exhibition or live performance, I think it would include working situations as cooperating with a museum or a private gallery, however, such relationships with the countries or the regions are actually not into a great relevance, it would be related more with the organizing abilities, so I think what I experienced are individuals, and I couldn’t connect them to the countries.
And due to working in foreign countries, once the work couldn't run smoothly, I would be very nervous, and couldn't relax to experience their local cultures.



>>>YAO, Chung-Han "HeartBeat"

──YAOがオーガナイズに関わる「失聲祭(Lacking Sound Festival)※以下LSF」について教えて下さい。出演するアーティストは、どのようにして選出しているのでしょうか?
──About LSF. You're working as an organizer on LSF. How do you choose the artists who appear on LSF?

通常は1回のイベントに2つのアーティストを呼んでいます。出演してもらったアーティストのほとんどは、私たちオーガナイザーの友人、友人の知人、友人からの推薦などです。また、失聲祭に興味をもってくれたアーティストに応募してもらうこともあります。最近台湾ではみんなfacebookを使っているので、facebookの失聲祭ファンページでも出演者を見つけることもあります。
通常一個晚上的活動會有兩組藝術家,藝術家的選擇通常來自周圍的朋友,或是透過朋友推薦,我們也有透過公開徵件的方式讓有興趣的創作者報名。最近因為大家經常使用facebook,我們也會透過失聲祭的粉絲專頁徵求表演者。
Usually we have two sets of artists for one night activity, most of the artists are our friends around, or recommended by friends, we also open competition and let interested artists register. Recently due to the popularity of Facebook, we also seek performances through LSF fans page



──LSFのドキュメンタリーのなかで、YAOは「台湾のサウンドアート界にもっとも足りないものは“ディスカッション”だ。」と言っていました。私は、日本のあらゆる現場において“ディスカッション”はいつも足りないと感じています。実際に私が2011年5月のLSFを訪れたとき、オーディエンスとアーティストが熱心にトークする様子を見て驚きました。“ディスカッション”は日本にとっても重要だと思います。LSFでアーティストトークの時間を設けることによって、台湾のアートの現場で何か変わったことや起こったことはありますか?
──You said on the documentary of LSF that "The most failure in Taiwanese sound art is "discussion"". I think "discussion" always fails in Japanese any scene. Actually I was attending LSF in May 2011 and surprised to see audiences and artists are discussed with their passions. Discussion is very important for Japanese also. Did anything happen or change around art scene in Taiwan after beginning Artist-talk at LSF?

そうなんです。5月のLSFでは、オーディエンスのみなさんがタフな質問をたくさんアーティストに投げかけていて、私も驚きました。とても良い状況だったと。LSFを長く続けてきたことにより、オーディエンスが、「どう音を聴くのか」「どう音について考えるのか」それぞれで考え理解しつつある。LSFのお客さんの脳内で変化があったということですね。容易ではなかったですが。
「台湾のアートの現場で何か変わったことや起こったことはありますか?」という質問には、答えるのが難しいですね。なにしろ、“サウンドアート”というものは、ごく小さなシーンです。アート全体の中の一部の“現代アート”、その“現代アート”のほんの一部である“New Media Art”、さらに“New Media Art”に属する小さな一部分が、私たちが扱う“サウンドアート”ですから。
LSFを始めた理由のひとつとして、私たちがサウンドアートを制作していく環境に満足していなかったという理由があります。しかし、LSFをスタートさせて4年が経過した今は、サウンドアートの発展だけに着目しているわけではありません。今さらに重要なのは、台湾におけるカルチャー全体とアートの関係性ですね!“サウンドアート”と“現代アート”の規模の違いで考えてみます。この2つの規模が入れ替わるとなれば、一体どんなことが起こるでしょうか。というよりかは、オーガナイズする自分たち自身に「どうすればサウンドアートの規模を広げることができるのか?」と問いたいですね。
是的,我也對5月座談的狀態感到非常驚訝,觀眾問了許多尖銳的問題,這是一個很好的狀態。我想這與我們長期經營LSF有關係,觀眾慢慢的知道如何去聽聲音,如何去思考聲音,這是屬於觀眾腦袋裡面的變化,很不容易。關於"Did anything happen or change around art scene in Taiwan after beginning Artist-talk at LSF?",這個我有點難回答,畢竟「新媒體藝術」是「當代藝術」的一個小區塊,「聲音藝術」是「新媒體藝術」當中的一個小區塊,所以「聲音藝術」在整個藝術環境中是非常小塊的一個領域。發起失聲祭活動的其中一個原因是:我們不滿於當時的聲音創作環境,但我們經營4年失聲祭之後發現,我們關心的不只是聲音藝術發展的問題,更重要的課題似乎是台灣整個文化環境與藝術的關係!!
上文提到了「聲音藝術」與「當代藝術」範疇大小的狀態,如果我們扭轉了這樣的層級關係,又會出現什麼結果呢?所以我們可以問自己,我們該怎麼扭轉?
Yes, I was also surprised to the artist talk in May; the audience asked many tough questions, which was a very good status. I think it’s due to our long term running of LSF, the audience are getting to know how to listen to the sound, how to think about the sound, and this is a change inside audiences’ brains, not easy at all. About the question "Did anything happen or change around art scene in Taiwan after beginning Artist-talk at LSF?" …it’s hard for me to reply, after all “New media art” takes only a small part of “Contemporary art,” and “Sound art” belongs to a small part of “New media art,” so the “Sound art” is a very small part of the entire art surroundings. One of the initiation reasons of LSF was: We were not satisfied with the sound creating surroundings, but after running LSF for 4 years, what we care about now, is not only the development of sound art, but more important issue seems would be the relationship between the entire culture surroundings and the Art in Taiwan!
Ahead I mentioned about the boundaries of “Sound art” and “Contemporary art,” if we reversed this hierarchy, what result would it come out? Therefore, we could ask ourselves, how to reverse? 




>>>Documentary of 失聲祭(Lacking Sound Festival)

──次のエキシビションやパフォーマンスの予定があれば教えて下さい。
──What is your next activity, exhibition or performance?

友人との共同でのパフォーマンスの予定を控えています。彼もサウンドアーティストで、名前はYEH, TING-HAO(a.k.a. PUTA)と言います。私は彼の作品がすごく好きで、今回協力しようと思ったのは、私もYEHもデバイスとしての肉体に注目しているのだけれどそれぞれ違った意見を持っているということから。なので、共同でのパフォーマンスは2つのコンセプトがそれぞれのパーソナリティをもって衝突するものになりそうです。面白くなるはずです。インスタレーションに関しては、引き続き今まで私が使ってきたデバイスでの展示を続けていく予定で、光とサウンドを用いたインスタレーションのシリーズは今仕上げに向かっている最中です。


>>>YEH, TING-HAO(a.k.a. PUTA) "Craftweak"

我接下來有一個和朋友合作的演出計畫,他也是一位聲音創作者,名為葉廷皓 YEH, TING-HAO(a.k.a. PUTA),我很喜歡他的東西,會想與他合作是我發現在彼此作品中,我們對於身體都有一些關注,卻各有一些主見,合作上應該會是兩種有個性的概念碰撞,會很有意思。裝置的部份我會繼續延續目前擅長的媒材,對於光與聲音的思考目前還在整理當中。
Following I am having a co-performance plan with a friend, he is also a sound artist, named YEH, TING-HAO (a.k.a. PUTA), I like his stuff pretty much, and the reason to cooperate was due to I found that, we both pay attention to physical body, but having different opinions, and the cooperation would be two concepts collision of each personality, it will be fun.
About the installation, I would continue to use the materials which I used it before, and the thinking of lights and the sound is still finishing. 



──YAOに話した通り、私はアジアの良いアートやカルチャーを日本や世界に発信しようとしています。そこで、良いアーティストを世界に発信し広げるためには何が重要か、YAOの意見を聞かせて下さい。
──As you know, I'm trying to introduce Asian good arts and culture to Japan and all over the world. Please tell me your advice. What is the most important for launching good artists to the world?

壮大な質問ですね。私の今の考えでは、世界に発信するために重要なことは“鍛錬”だと思っています。LSFを開催しつづけるということは、アーティスト達にとって、彼らのスキルを上げ磨かせること。若いアーティスト同士でそれぞれ吟味しあうことができますし、オーディエンスはそれぞれ自身の耳や考えを鍛えることができます。そして、まずは私たちオーガナイザーがより努力を重ねることで、未来の台湾サウンドアート界にとって重要な結果をもたらすでしょう。
這個問題對我有點大,我覺得我目前的想法還處於"練功"的狀態,籌辦失聲祭像是讓一群人一起練功。年輕的創作者可以互相觀摩,觀眾可以培養聆聽的耳朵與思考,這個功夫要練得紮實,對臺灣的聲音藝術未來,應該很重要。
This question is quite big for me. I think my current idea is still under the status of “practicing.” Running LSF would be like offering a group of people to practice or sharpen their art skill. Young creators can observe to each other, the audience can train their ears to listen and think, and then, 
once we make our effort stronger, the result might be very important to the future of Taiwanese sound art. 

Mandarin-English Translator : Melody Chuan 全瑋菁

interviewed by 山本佳奈子 (Kanako Yamamoto)

If you would like to work with YAO, Chung-Han, please contact to Agora Art Project × Space 藝譔堂.