日本で知られていない韓国のアート・デザインシーン。韓国デザイン雑貨ショップ g.カロスキルの松田さんに聞く!

先日Offshoreでも紹介した、大阪中崎町yolchaで行なわれた『韓国アートブック展』。その展示を主催していたのは、韓国のデザイン雑貨を販売するオンラインショップ“g.カロスキル”。韓国のアートブックたち、素晴らしいデザインに感動した私は、さっそくg.カロスキルオーナーの松田さんにお願いしてあらためてインタビューさせていただき、松田さんに韓国のことをあれやこれやと質問してみた。日本から一番近い国、韓国。でも、韓国のクリエイティブシーンをご存知だろうか?私は、松田さんにお話を聞いて、春には絶対韓国に行こうと心に決めた!デザイン・アートで知る海外。これこそ、Offshoreが思う、いちばん楽しい国際交流。

Offshore: 「韓国アートブック展」photo report/ Korean Art Books Exhibition Photo report

>>>『韓国アートブック展』のひとつのコーナー。『美しい25冊』の一部。どれも韓国からやってきた本だ。



松田洋奈 プロフィール
オンラインショップ「g.カロスキル」運営。
パリ・ミラノ等国内外のファッションコレクション取材で培った経験を生かし
オリジナル目線でセレクトした韓国ファッション雑貨、カルチャーを配信中。
もうひとつの楽しい!韓国をテーマに、日韓行ったり来たりの日々。

g.カロスキル http://garosugil.com/



■実は韓国にまったく興味がなかったんですよ。

──松田さんはロンドンに留学されてたことがあるんですよね?

松田: 最初は神戸の大学に通ってたんです。その頃にファッションショーを何かのきっかけで見て、パリコレが生で見たいと思った。それならヨーロッパに行かないとと思って。夜間の専門学校で自分で服を作ることもある程度勉強して、お金も貯めて、ロンドンでファッションの報道を勉強する学校に1年間通いました。
留学中に、ロンドンコレクションに行ってみようとしたんですが、招待制なんですよね。マスコミ、バイヤー、セレブ、あと友達の友達ぐらいまでしか入れなくて。一般人はなかなか入れてもらえない。それでロンドンコレクションの出待ちから始めたんですよ。ショーの最後のほうになれば、裏にいる警備員が、隙間が開いてたら「立ち見で良いなら裏から入りな」って入れてくれて。それを3回ぐらいロンドンでやって、パリでもパリコレで出待ちして。留学中はとにかくそんなことをやってました(笑)。頭の中それしかなくて、とにかくコレクションが見たくて仕方なかったんです。
でもまあ1年終わって、上級の学校に行くっていう選択はせず、お金もなかったんで、大阪の実家に帰ってきました。ロンドンから履歴書をいろんな会社に送ってたんですが、東京のある編集社から「アルバイトを募集してる」と連絡があって、大阪に帰ってすぐに東京に移って、約4年間働きました。たまたまその時の上司が韓国人で、そこから少し韓国に近くなったという感じですね。

──その後、韓国に行かれるきっかけは?最初に韓国に行かれたのはいつ頃だったんですか?

松田: 東京のファッション雑誌の会社を辞めてからは、フリーでファッションの取材の仕事をしてたんですよ。ちょうど家族の病気もあって、東京と実家の大阪を行ったり来たりしていました。そうするとストレスも溜まってきて、そんなときにたまたま、2泊3日韓国ツアー19,800円ってすごく安いツアーを見つけて。それが5年前ぐらいです。
実はそれまで韓国ってまったく興味がなかったんですよ。香港、東南アジアには行ってたんですけど、韓国はまったく興味なくて。ロンドンに留学してた時、韓国人の知り合いってきつい感じの子が多かったのであまり良い印象がなくて。でも父親は仕事で韓国によく出張に行ってて、「韓国は一回行ってみろ」ってずっと言われてたんです。母親も疲れてたし、母と二人で息抜きの為に行ったのが最初の韓国旅行でした。母親と、「これにちょっとお金足したら香港行けるよな…」とかぶつぶつ言いながら、半ば嫌々で韓国に行ったんですよ。韓国行ってみたら、意外と良くて。「あら?!」って(笑)。

──全然期待してなかったけど韓国良いやん、と。

松田: 母親と「まあ、もう1回行ってもいいかな!」とか言いながら帰ってきました。それで韓国のイメージがガラッと変わって。私はそれまで韓国語って苦手だったんです。韓国人が、がーってしゃべる音の響きがなんか嫌で。いっつも怒ってるみたいでうるさいと思ってて。でも行ってみたら、みんなすっごい親切で、そんなことないやんと思って。

■韓国にはこんな面白い文具とかかわいい文具があるのに、日本では知られてない!

──初めての韓国旅行では何をしていたんですか?

松田: いわゆる観光ですね。ツアーなんだけどフリーで、自分たちでガイドブックを見ながら「ここ楽しそうやから行ってみよう」って廻ってましたね。それで、その旅行中に本屋さんに行ったんですよね。そしたらその本屋に文具がいっぱいあって、その文具が面白かった。デザイン文具です。「韓国にはこんな面白い文具とかかわいい文具があるのに、日本では知られてない!」と。後からわかったことなんですけど、ちょうどその頃は、韓国のデザインシーンを盛り上げるためにソウル市が若いデザイナーに援助したり発表する場を多く提供していた時。それからたくさんのデザイナーが輩出されて、時期としてはその始まりの頃でしたね。その時行った本屋は、日本で言う紀伊国屋みたいな大きな本屋で、それまではそんなコーナーなかったんです。それまでは、地味な文具しか置いてなかったそうです。

──日本の大型本屋の文具コーナーもほとんどが地味な文具しか置いてないですよね。

松田: そういう地味な文具もあるけど、別のコーナーとして若いデザイナーの文具も置いてたんですよね。ずーっとそのコーナーを母と見てました。お土産でたくさん買って。それから、その半年後ぐらいにまた韓国に行く機会があって。友達にたまたま誘われたんです。そのときもたった22,000円。

──安い!

松田: 韓国に興味が湧いてたし、近いし、「一緒に行くわ」って。
それで三清洞(サムチョンドン)というエリアにあるアクセサリー屋にたまたま行ったんです。古い街並も残ってる散策スポットなんでよくガイドブックにも載ってるエリアです。そこにあったソグノっていうアクセサリー屋さんに入ると、そこのお姉さんが日本語ペラペラで。1人でその小さいお店を経営してて、置いてるアクセサリーもすごいかわいくて。そのお姉さんに、前回の韓国旅行でデザイン性の高いかわいいステーショナリーを見て衝撃を受けたということを話してました。そうしたら、そのお姉さんも「確かに今面白くなってきてるよね、韓国も。じゃあこれから流行ろうとしてる街があるからそこに行ってみたら?」って。それでお姉さんに教えてもらったのが、私のお店の名前「カロスキル」という街です。「タクシー呼ぶから行きなさい」とタクシーに乗せられて。今だったらその三清洞とカロスキルって絶対タクシーに乗らない距離なんです。遠いし渋滞に巻き込まれるんで。でもお姉さんはたぶん私が韓国の土地勘がないからタクシーに乗せた方がいいと思ってタクシーに乗せてくれた。そして初めてカロスキルに行きました。今カロスキルはすごく人気な街で、私が初めて行ったそのときとはまったく変わっています。その頃は小さな雑貨屋とかデザイナーの小さなショップがちょこちょこあったんですが、今はもう大きな資本も入ってきて、カフェと洋服の通りになってますね。
その時の韓国旅行は、そのアクセサリー屋のお姉さんとカロスキル通りが、ぐっと印象に残る旅でした。それで、帰国してからも、ずーっと何か気になってたんです。1週間後ぐらいだったと思うんですけど、「店やりたいなあ」と思って。

──すごい勢いですね。

松田: 拘束されるのが嫌なタイプなんで、場所をかまえて店舗を出すのはちょっと違うと思ってて。そこで、ネットショップなら、パソコン触るの好きだしできるかなと思ったんです。でも、私は人にものを伝えることは好きだけど、モノを売ること自体に興味がなかったので、どうなんかな?と思ってました。そこで、韓国で出会ったアクセサリー屋のお姉さんに電話してみたんです。

──国際電話で韓国のお姉さんに相談したんですか?

松田: そうです。それぐらいあのお姉さんと出会ったことが残ってて、ネットショップやって見ようかな?という、もやーっとした気持ちをお姉さんに相談しました。「あの時行った日本人だけど、ネットショップやろうかなと思ってるんやけど、どう思う?」って。そしたらお姉さんはすんごいあっさりと、「やったら?」って。そもそも韓国の人って、起業精神ある人が多くて、社長になりたい、とか、自分の会社を持ちたい、という目標を持ってる人が多いんです。

──日本みたいにしっかり計画したり思い悩む感じじゃないんですね。

松田: ないですね。韓国の人たちもそれなりに悩んではいるんだろうけど(笑)。それにしてもあっさり言われてしまったので、「あ、そうか。やったらいいんや。」と思って。「わかった、やるわ。」と言って電話を切りました。それで、次にネットショップをやるのにはどうするか、というのを調べて。そして同じ月に仕入れの為にまた韓国に行きました。最初は5つぐらいの仕入れ先から、カロスキルをオープンしました。だからそんなに真面目に考えてやり始めたわけじゃなかったんですよね。それまでは、興味のある外国といえばヨーロッパか香港か東南アジアだったのに、いきなり韓国に行くことになって、韓国のデザイナーグッズが日本にぜんぜん知られていないことがわかった。韓国に行ってみれば面白かったし、そしてそのお姉さんの一言がなければ始めてなかったかもしれません。

■韓国では、アポがなくても対応してくれることが多い。飛び込みで行った店でも交渉を始めることができたり。

──当時、それぞれの仕入れ先と交渉するのはどうやってらしたんですか?特に言語はどうしてたんですか?

松田: 英語と日本語ですね。あるブランドはバックに慈善事業を行なってる団体があったりして、そのメンバーの1人が日本語を話せたから訳してもらったり。あとは電子辞書。片手に持って「いくらで卸してくれますか?」って(笑)。韓国では、アポがなくても対応してくれることが多い。飛び込みで行った店でも交渉を始めることができたり。話が進みやすいです。

──そういうとき、韓国の人たちの反応はいいんですか?「私たちの商品を日本でも売りたい!」とスムーズに思ってくれるんでしょうか?

松田: まあ最初はみんなびっくりしてますね。「え?あんた誰?」って。始めた当時はもう自分の強い想いだけだったんで、とにかくしゃべるんですよ。自分で書いた韓国語で一生懸命。「私はあなたの商品にすごく感動しました!……」って。そうすると相手は「もうしゃーないな」ってなってたかもしれないですね。じゃあこれならいくらで卸せて、いくつ卸して、ってその場で答えてくれて。ただこれが日本だと、「ちょっと待ってください、折り返しご連絡します」となって、しばらく待たされて、結局連絡がないっていうパターンも多いと思うんですよ。韓国では飛び込みでも即交渉ができるっていう点に助けられましたね。

──私もアジアで取材するとき、自分には何もないけど「あなたの活動すごく面白いよね、話聞かせて!」とアタックすることから始まってます。そうすると相手はだいたいがウェルカム。いきなりインタビューとかもさせてくれたりするし。それに、「え?なんで日本人が僕たちに興味あるの?日本の方が面白いこといっぱいあるでしょ?」みたいな反応もありますね。

松田: 確かにそういう反応ですね。「日本のほうがむしろたくさん良いモノがあるのに、なんで韓国に興味を持ってるんだろう?」って。

──それに日本だとどういう会社や組織に属してるのかっていうのもすごく重要だったりするじゃないですか。まずはバックグラウンドや知名度だったり。私がアジアで取材させてもらった人たちはまったくそれを気にしてないし、こんな私みたいな超インディペンデントでやってる人でも「来て来て!」って。

松田: 私も、とりあえず名刺だけ持ってる何者でもない自分が1人でぽんと行ってたんです。そして、会話して、卸そうか、って。そうなればさらに頑張ろうってなりますよね。韓国の人に背中を押され、すぐに話も進み、あまり苦労することなくカロスキルを立ち上げることができました。

──そしてカロスキルは今だいたい4年ぐらい続けられてるんですよね。

松田: そうですね。11月1日から5年目に入りました。

■韓国のデザイナーが日本で自分を売ることはまだ難しい状況なんです。

──カロスキルで販売する商品を選別する基準は?

松田: 私が基準です(笑)。

──それはそうですね!しかしどの商品もデザインが素晴らしいですよね。

松田: デザインは良いものが好きだし、最初はデザイン雑貨というくくりで、韓国ものにこだわらなくてもいいかなと思ってたこともありました。韓国、日本、ヨーロッパものも販売するデザイン雑貨屋。ただ、私は韓国に行くことで韓国に対するイメージが変わったわけだし、まずは韓国のことを紹介したいと思いました。まずは韓国のモノだけに忠実に。理想は、韓国雑貨、日本雑貨、ヨーロッパ雑貨と分けて紹介しなくても、それらが同じ場所に並んで、「あ、いいな」と思って韓国雑貨も手に取ってもらえる。そういう風にもっていきたいですね。ちなみに、韓国のデザイナーが東京の展示会などに出展するようになってきていますが、まだまだヨーロッパのデザイナーと比べれば、買い手がつかなかったり、買い叩かれている状態です。

──それは、日本人の持っている、アジアのイメージが影響しているのかもしれないですよね。日本以外のアジアは、日本より遅れている、という固定概念。

松田: たぶんあると思います。あるから、韓国のデザイナーはなかなか日本で思うようにいかない。逆にニューヨークでの展示会の方が買い手が付くということがよくあります。韓国のデザイナーが日本で自分を売ることはまだ難しい状況なんです。

──松田さんが開催された『韓国アートブック展』の中での企画『美しい25冊』、本当に素晴らしい本ばかりでしたよね。あれらの著者やクリエイターの方々はすでに有名な方が多いんでしょうか?

松田: いろいろですね。有名な人もいればまだ無名の人もいます。

──そもそもあの25冊は誰が選んだんですか?

松田: The Book Societyという本屋のリムさんがセレクトしてます。彼は「Media Bus」という小さなインディペンデント系出版社も運営していて、一部は京都の恵文社でも取り扱われています。彼についてはtypograhics ti: でインタビューが掲載されています。

*typographics ti: とは…
日本タイポグラフィ協会が発行する協会誌。現在は、アジアのタイポグラフィを現地取材を元に紹介したシリーズが発行されている。
Offshoreで以前インタビューしたバイリンガルアートガイド『FLAG』の2人も取材・編集に参加している。

Offshore: 大阪ローカルアート情報を英語で発信するメディア“FLAG”インタビュー

■韓国は紙も印刷代も安くて、クオリティも良いんです。

松田: 元々、本の展示はやりたかったんですよ。本が好きなんで。今まで雑貨の展示は、いろんな所でやらせてもらってて。京都の恵文社でもやらせてもらいましたし、下北沢や、倉敷でも。今回は単純に自分の好きな韓国の本を展示してみたらどうなるだろうと思ってやってみました。これが韓国で行なわれていた『美しい25冊』のフライヤーなんです。現地では、このフライヤー通りに本が配置され、それぞれの著者・作者のインタビュー映像も展示されていました。

>>>これがフライヤー。3分割するような点線が入っている。紙も分厚くしっかりしている。


──かっこいいフライヤーですね!

松田: 韓国は紙も印刷代も安くて、クオリティも良いんです。日本では色数で値段が大幅に変わったりしますけど、韓国ではあまり変わりません。特色で金とか銀とか使ってもそんなに高くならないんですね。私も大量にポストカードを印刷するときは韓国で発注するんですよ。その代わり100枚とか少数では刷ってくれないですけど。

──香港・台湾・中国もチラシが面白いんですよね。日本で見るいわゆる普通のチラシ・フライヤーなんて少なくて、みんなこだわってる。現地の人に聞くとやっぱり印刷代が安いっていう話なんですよね。香港は陸ですぐ大陸に行けるから、みんな大陸の安い印刷会社で発注するっていう話でした。『韓国アートブック展』で並んでいたあの本たち、日本ではあの紙質や印刷のバリエーションはなかなか出せないですよね。

松田: アジアは紙好きにはたまらないですよね。韓国が好きな理由のひとつでもあります。


■デザインの勉強をすれば、ハングル文字の素晴らしさに気づくみたいです。

──固有の文字に関しても、日本以外のアジアに共通点があると思ったんです。『韓国アートブック展』で販売されていて、私が購入したクリップ、あれはハングル文字がクリップに組み込まれていて素晴らしいデザインだと思いました。香港や台湾でも繁体字をうまくデザインに取り入れている雑貨を見かけることが多いんです。日本ではひらがなやカタカナがうまくデザインされて組み込まれた雑貨ってあんまりないですよね。韓国でハングルをデザインに組み込んだ雑貨が見られる理由には、やっぱり言語に対する愛着みたいなものがあるんでしょうか?

>>>고마워(コマウォ=ありがとう)という言葉がモチーフになったクリップ。NOTHING dESIGN GROUPによる商品。

松田: やっぱり韓国でも、ハングルに対する想いは分かれていると思いますね。なんとなく恥ずかしいと思っている人もいるし、誇りを持ってる人もいるし。でも、デザインの勉強をすれば、ハングル文字の素晴らしさに気づくみたいです。世界にこんな言語は他にない、と。そう気づけば、ハングル文字を使ってデザインしようと。海外の雑誌とか見て海外に憧れを持っていても、勉強していく中で、ハングルの面白さに気づく人が多いです。

──そういえば、南米の表記文字を持たない少数民族に、韓国がハングル文字の輸出をするというニュースで見ました。
参考記事:「ハングル」を世界の少数民族に 韓国が「輸出攻勢」 : J-CASTニュース

松田: 私もそのニュース見ました!

──それって日本では反韓感情で書かれる・語られることが多いと思うんですけど、私は単純に文字の可能性としてすごく面白いなと思ったんです。まったく韓国語を話さない地域で、音の表記としての役割でハングル文字が使われる、っていう。

松田: 韓国でもそういう話になったことがあるんですよ。ハングルカフェっていうのがあって。ソウルの弘大にあったんですが、今年の6月に閉店しました。ハングルを研究している人たちがいて、ハングルカフェっていうのをオフィス兼カフェとして運営してしたんです。

──ハングルカフェ!そのハングルカフェの人たちは、ハングルを研究して、カフェをやってるんですか?

松田: そうなんです。ハングルTシャツとかも売ってて。私は韓国で良く売られているハングル文字の入ったデザイン性のないお土産とかは好きじゃないんです。女の子が描かれてて「アンニョン!」みたいな。そういうのはダサイと思ってて。ハングルカフェの人たちは元々グラフィックデザインをやってる人たちなので、グッズのデザインが良かった。ハングルカフェが作った缶バッジは今もカロスキルで取り扱ってます。学問としてのハングル、デザインとしてのハングルを研究している人たちが運営してました。元々大学の先生が始めたみたいで、その先生の学生たちがスタッフとしてそこで働いて。

──じゃあゼミの延長ですね。

松田: そうです。1人で行ける静かなカフェで、パソコンでゆっくり作業できたり。良いところでした。

>>>これがハングルカフェ! 写真提供:g.カロスキル

──なんで日本には「ひらがなカフェ」ないんでしょうね?

松田: ね!外国の人いっぱい来そうなのに。「ひらがなカフェ」、いいかもしれないですね。

──ちょっと誰か「ひらがなカフェ」やらないですかね?やります?

松田: やりますか?サクラビル(大阪市中崎町にある雑居ビル)あたりで(笑)。ハングルカフェの人たちも、そのハングル輸出のことは喜んでて、「輸出しちゃうなんて誰が最初に考えたんだろうね?」って言ってました。文字自体が外国に輸出されて使われるっていうことが面白いと。

──何か松田さんの韓国でのオススメをご紹介していただきたいんですが、私がメールで提案したのは、韓国のアーティストで、社会問題も考えるアーティストでオススメの方はいませんか?ということで。

松田: ノ・ソンミさんというアーティストですね。今は北朝鮮との境に猫7匹と住んでいます。元々ソウル出身で、詩と絵を描いておられます。絵に詩が付いていることが多いんですけど、必ずしもその絵と詩が対応しているわけじゃないんです。彼女の中では、世の中でこれとこれが繋がるっていうイメージで組み合わせてる。それが特徴です。
ノ・ソンミ ブログ http://nohseokmee.com/

──ノ・ソンミさん流のリンクがあるけれど、ぱっと見ただけで気づかないと。

松田: 少し見ただけではまったくわからないことも多々あります。
最初、韓国の本屋で彼女の画集が目についたんです。そうしたらスッカラという雑誌で彼女がインタビューされてて、どうしても彼女に会いたくなって、自分から連絡して彼女に会いに行きました。彼女に会いに行って、その場で彼女の絵を買って。あと彼女の作品には、自分の古着やもらった古着の生地を利用して作った人形「ノ・ソンミ ピープル」というものがあります。古着なので柄がすごくかわいいんです。モノを大切にしようという彼女なりの解釈です。家中にいっぱいその人形がいるんですよ。ミニチュア版のストラップもあったり。

>>>『韓国アートブック展』で展示されていたノ・ソンミさんの絵。ひときわ大きな存在感を放っていた。


■韓国ではこの数年、環境問題が大きなトピック

──香港のクリエイターやアーティストは特に、土地柄もあって、社会状況を理解して自分の作品で社会問題を表現する人が多い。日本以外のアジアではそういう空気が強いと感じてるんですけど、日本ではクリエイティブと社会問題が分離されてるように感じることが多くて、メインストリームにいる人たちは特に社会に対して言及しなかったりしますよね。韓国はどういう感じですか?

松田: 韓国でも分かれますね。はっきりものを言う国民性なんですけど、言うとバッシングも強かったり。女優さんが叩かれて自殺とかも多い。そういうバッシングが多いから言いづらいという環境があります。クリエイティブな活動をしていても大っぴらに言えないことが多いですが、ちゃんと社会を考えながら活動している人は日本よりも多いと感じます。

──韓国でそういうクリエイター達が考えるトピックで第一に来るものはなんでしょうか?香港なら、まず「家賃の高騰」っていう問題が出てきたりします。あと、いつ中国政府にどこまで自由を規制されるかわからない。香港でみんなが考えている社会問題は「不動産問題」「自由」この2つが圧倒的に多いですね。

松田: 韓国ではこの数年、環境問題が大きなトピックかもしれません。リサイクルや健康、ロハス志向であったり。政治的なことはあまり言わないですね。いかに自分たちの生活を快適に、地球を汚さずに暮らすか。今環境問題は韓国人のあいだで日本よりも考えられていると思います。韓国の人たちは「今これが良い」となればすぐにみんながそれに飛びつくんですね。わかりやすいです。さっきまで右!って言ってたら、次は左!みたいな。日本人もそういうところありますけどね。今サイクリングもブームでそういうグッズも多く作られています。いかに自分たちが作ったものと社会問題を絡めながらお金を稼いで生活するか、っていうのはテーマですね。とにかく今は韓国ではどこに行ってもリサイクルの話を聞きます。

──具体的にリサイクル関連のグッズでどういうものがありますか?

松田: こういうバッグありますよ。垂れ幕で作ったバッグとか。だいたい現地で500~600円ぐらいで売られてます。映画の広告でバッグを作ったり。キルティングになったり、メッセンジャーバッグになったものもあります。ミュージカルの宣伝の幕もあれば、どこかの漁協の幕も使われてたり。全部1点ものですね。

>>>これが垂れ幕を再利用して作られたバッグ。生地がしっかりしていて長持ちしそう。

あと若い企業でorg.(オルグドット)という会社があるんですが、ここは商品を開発して社会的な動きをしていこうと。
http://www.orgdot.kr/
上っ面だけを言っていてもダメなんじゃないか?と。自分たちの意志をひたすら言っていても、何か生み出せなかったら還元できないということで、ある程度生産しながら社会に貢献していくという活動をしています。うちでも取り扱ってるんですが、ペットボトル2本から作られたバッグがあります。

──ここは木製のUSBメモリも作ってる会社ですよね?

>>>韓国語の「H (ヒウッ)」に当たる子音の文字をモチーフにしたUSBメモリ。写真提供:g.カロスキル

松田: そうです。あれは外国の人からも人気がありますね。このorg.は、5、6人でやってる会社なんですけど、みんな社会を見据えて、自分たちに今出来る発信の仕方でどこまでできるか、ということをやっています。

──やり方がうまいですよね。かっこいいモノを持ちながら環境を考えた行動ができる。ちなみに、韓国のインディーズ映画ってどうでしょう?

松田: 面白い作品多いですよ。大阪だったら第七藝術劇場でたまに韓国インディー映画の上映があったりしますね。映画館も日本ほどではないですけど韓国にちょこちょこありますよ。あと韓国インディペンデント・アニメーション協会(KIAFA)の人たちが韓国のインディーアニメを広げようとしている動きもありますね。KIAFAは日本にも年1回巡回しています。
『花開くコリア・アニメーション』http://www.geocities.jp/ako790107/ianifest/
そういう上映会も今後やりたいと思ってます。「東京ごはん映画祭」の韓国バージョンとかもやりたいんですよね。韓国映画を見て韓国料理を食べる、っていう。


■韓国の人は「よく稼いでね」という言葉を挨拶に使うんですよ。

──それは面白そう!ではそろそろ締めに入りますが、韓国に関して他に松田さんが感じられていることがあればぜひ教えて下さい!

松田: 韓国の人ってお金に対してストレートです。韓国の人は「よく稼いでね」という言葉を挨拶に使うんですよ。実際に韓国に行くと言われますよ。「儲かってる?最近どう?」って。

──「儲かりまっか?」が挨拶だった大阪って、そのノリに近いのかもしれないですね。

松田: 韓国の場合はもっとダイレクトに刺さってくる感じで。お金がすごく身近なのが韓国です。

──そこに何も不自然さを感じないのが韓国ってことは、フリーランスでやってる人たちも、堂々とまずはお金の話をする感じなんですか?

松田: そうです。逆に曖昧は許されませんね。反面、ボランティアも多いですけどね。

──じゃあ欧米の人にとってみれば、日本より韓国の方が仕事がしやすいかもしれませんね。

松田: そう思います。食べ物も量がたくさん出てくるし(笑)。欧米の人には韓国って割と居心地がいいと思いますよ。
ちなみに韓国のネガティブな面をあげるとすれば、一過性で終わることも多いということです。例えばアートシーンが盛り上がってきた時期があって、いざそれを取り上げようとしてもすぐに終わってます。デザイン雑貨ショップやアートショップでも、一部のお店では圧倒的に商品が減ってたり。新しいものが産まれてないってことなんです。正直、ここ半年ぐらいはワクワクするデザインに出会えていません。そこが韓国の今の課題かなと思ってます。

──デザインやアートの波がぐっと来て、それがいったん今落ち込んで、これから新しい動きが出るか、どうなるか、という感じですか。

松田: いったん落ち込んだ今、より成熟していくためにどうすればいいかと模索しているところですね。しっかり残っている会社やお店もあれば、名前を変えてやっているところもあります。嫌になったらすぐ辞めちゃう人が多いんで。アジアのラテン系とはよく言ったもんだなと思います(笑)。人間同士の付き合いもラテン系で、とにかく熱い。私はあまり干渉されることを好まないんですけど、韓国の人たちはおせっかいで世話焼きで、土足で踏み込んできます。だから韓国では、あけっぴろげにしてるしかない。それに、仲良くなったらすぐ家族になります。困ったときはなんでも助けてくれます。家族になればどんどん友達も紹介してくれるし、どんどん繋がっていくんですね。
あと、韓国の人たちは何かと「ウリ」って言うんです。「ウリ」って「私たち」っていう意味なんです。「私のお母さん」「私の友達」と言うときにも「ウリ」と付けるんです。「私たちのお母さん」「私たちの友達」と。それぐらい身内意識が強いんですよ。

──それ、話してたらワケわからなくなりませんか?例えば、「ウリ オモニ」?自分の母親のことを話してるけど「our mother」ってことですよね。

松田: もう会話はウリだらけですよ。仲間になればみんなが家族です。

──文化の違いって面白いですね。私も一度韓国を訪れないと。19,800円のチケット探します(笑)。




interviewed and text by : 山本佳奈子(Kanako Yamamoto)