セルフレポート・toe山嵜氏、kowloon中村氏を迎え『アジアでライブをする方法』

4月11日、toe山嵜廣和氏とkowloon/stimの中村圭作氏を迎えて、UPLINK FACTORYにて『アジアでライブをする方法』と題し、トークセッションを開催した。




UPLINK FACTORYは満席。60名以上の方が来ていただき、多くの大手媒体にもこのイベント情報を告知していただき、日本の音楽シーンにおけるtoeというバンドの存在をあらためて認識した。また、日本のインディー音楽シーンにおいて、このようなイベントを企画する人はいなかった。私は、自分の興味として、このようなイベントがあれば参加したいと思っていた。そんな私自身の興味で開催したイベントに、多くの方が同じように興味を持ってくれたことは、大きな発見だった。日本のインディー音楽シーンはこれからどう形を変えていくのだろうか。今回のイベントでは具体的なビジョンは見えなかったが、今後、このようなケーススタディを紹介するイベントが増えることで、固定概念を崩すことはできると信じている。

会場から笑いが起こることが多かったこのイベント。『アジアでライブをするHow To』をしっかりとお伝えできなかったところもあるかもしれない。このようなインディー音楽をトピックとしたイベントは形を少しずつ変えながら続けていきたいと考えているので、今回お越しいただいた方でまだまだ質問があったという方も、今回ご来場いただけなかった方も、またOffshoreからのイベント情報をチェックして欲しい。

では、今回のイベントのセルフレポートをお届けする。





──toeアジアツアー写真スライド・映像上映を終えて

山本佳奈子(以下、山本):私が行ったマレーシア・シンガポールでのライブ後、オーディエンスにインタビューすると、だいたいの人が「インターネット・友人からtoeを知った」と。toeのCDをマレーシアやシンガポールのレコード店では販売してないけれど、これだけの人たちがtoeのことを知っている。もしかしたら違法ダウンロードしてる人も多いのかもしれないけど、現地でのライブ物販では多くの人がCDを買っていました。これほどCDを買っている人が多く、バンドの正規品でサポートしたいという人も多いということがわかりました。toeアジアツアーを終えて、感想ありますか?

山嵜廣和(以下、山嵜):フィリピンの女の子かわいかったね。

会場笑

中村圭作(以下、中村):Mosaic Music Festival(シンガポール)はルールとかステージ周りのセキュリティが厳しかったよね。スタッフパスもそれぞれの名前とバーコードがついてて、それを機械に通さないと裏口に入れない、っていう。

山嵜:シンガポール以外の場所は、インディーズのバンドを呼んだりしてるオーガナイザー達だったんだけど、シンガポールだけは政府も絡んでてクラシックのライブも企画してるようなカッチリした呼び屋さん(プロモーター)でしたね。もっと入りそうなハコに300人限定で、結構スカスカだったよね。消防法か何かの規程があるみたいだけど。

~中略~

山本:じゃあちょっとkowloonの話してもいいですか?

中村:いいですよ。

山本:kowloonも、北京、香港、韓国と。じゃあ写真をお見せしながら。

──写真スライド

中村:これはMaoですね。

山嵜:toeもやったとこ?

中村:あれは上海Maoで、これは北京のMao。キャパシティがちょっと違って。2008年、北京オリンピックの頃に行ってました。北京Maoの対バンは「迷宮」、あとなんて読むのかわかんないけど「猪肉」っていうバンドと3バンドで(笑)。

山本:kowloonは北京のD-22でもライブしたんですよね。北京のアンダーグラウンドシーンでは一番実験的な場所で、でも今年1月になくなっちゃいましたね。

山嵜:え、もうないの?

中村:そう。kowloonが行くところはだいたい潰れる(笑)。京都ウーピーズもなくなっちゃったし。

山本:でも香港Hidden Agendaは場所変えてまだやってますよ。まずkowloonで海外に行く時は、何を最初に決めてるんですか?日程ですか?

中村:日程決めて、あと飛行機の飛び方かな。経由便とか。アジアに強い航空会社で行くのも安いけど、代理店を通した方が安いときがあって。そういうのを使わせてもらって、北京・香港ー韓国と行ってます。

~中略~

White Noise Recordsのマネージャーであり、toeのツアーマネージメントを務めるGaryとのSkypeトーク


山本:どういうきっかけでGaryはtoeのツアーを始めたの?

Gary: 2008年に始めました。最初は僕が香港にtoeを呼びたいという話から始めて、MySpaceで直接連絡を取ったのが始まり。東京に行って直接会って山嵜さんやtoeのメンバーと会って話した。その後、香港だけで呼ぶとコストがかかるから、一緒にアジアのいろんな都市でもやってもらうようにして、アジアツアーという形が始まりました。

参加者の方からの質問:お店に送られてくるデモ音源はどれぐらいですか?それは全部聴いていますか?

Gary: デモCDを直接店に送られることはないけど、メールはたくさん受け取ります。だいたい10通未満ぐらい、1ヶ月に送られてきます。送られてきたものは全部聴いてますね。ただ、全部に返信することはちょっと難しいです。

中村:1ヶ月10通未満って意外と少ないね。僕もたまにお勧めのバンド送ったりするから、それを除けば残り8通ぐらい(笑)。

参加者の方からの質問:紹介したいバンドがあるんですが、直接メールしてもいいですか?

ーSkypeが切断してしまうー

山本:じゃあSkypeが調子悪くなってしまったので、今からテキストメッセージで送ります。(山本、「○○さんがGaryにメールを送ると言っています。紹介したいバンドがいる、って。」とタイプ。Gary、「pls send me!!」と返信届く。)

山嵜:まあ直接連絡取ればたいていのことがなんとかなるよね。

中村:○○さんもGaryに直接メール送ってもらって、みなさんもGaryにメールしてもらえれば、次はGary「1ヶ月に10通未満」なんて寂しいこと言わないかもしれない(笑)。

山嵜:結局、呼び屋(プロモーター)の情熱って大事だから。海外のバンド呼ぶってお金かかるし大変なんだよね。それをGaryはtoeのアジアツアーで何から何までやってくれてて、もう彼がいないと僕らは何もできないんですよ。

中村:kowloonの場合は知名度がまだ低いんだけど、メールで海外から「kowloonを呼びたい、いくらかかりますか?」って連絡があることも。返信で経費を提示すると、「じゃあ無理だ」ってなっちゃう。でも、そこからメールのやり取り続けて、話していってお互い理解していけば、自腹で航空券払って行くことも考えたり。

山本:要はコミュニケーションなんですよね。

山嵜:でも、まずは日本でやればいいんだよね。日本である程度やっていればそれなりの評価を得ることもあるかもしれないし、そうなったら海外からGaryみたいな人が呼んでくれることもあるかもしれない。海外に行くことが目的になっちゃうとおかしいから。

中村:それもそうなんだけど、日本のシーンに対して疑問があるとしたら、日本のシーンで無理に展開していかなくても、海外で何か可能性が見えることもあるかもしれない。知り合いに、韓国ではすごい人気が出たけど、日本でまったく知られていないという人もいて。日本のマーケットは大きいから、日本のなかで日本語でプロモーションしていけば食っていけるかもしれない。でも、例えばもっとマーケットの小さい国だったとしたら。国内ではマーケットが小さすぎて外に出なければ食っていけないかもしれない。それと同じ理論で、日本のなかだけで留まらず海外でやることでもっと広がるから。

山本:ちなみに今の日本インディーシーンに対して何か思うことはあります?例えば、CDが売れないと嘆かれていたり。

山嵜:基本的に僕らがやってるような音楽でごはんを食べられると思っている方が不思議な話で。レコードが出来てから印税というものができて。それ自体が夢のような話じゃないの?って。CDが出てきて、データが焼き付けられてみんながすぐコピーできちゃうもの売られているっていうのが性善説のような(笑)。それがみなさんの善意に甘えてやってるような感じがするので。僕らはライブをやりたいだけで音源を作っているんで。そのうち音源っていうのはフリーになってしまうんですよ。 ~中略~ こういうこと言うと、音源でお金もらいづらくなるから嫌だけど。レコーディングってお金かかるんですよね。なので、好きなバンドをサポートするという心意気でいろいろ買って欲しいですね。

中村:僕のなかではそれは極論で。音楽のなかで食える人と食えないタイプの人がいるんですよ。20代のときにかわいかったりかっこよかったり、アイドル的な人は食えますよ。バンドで自分たちのやりたい表現をやりたい人、それはいいことだと思うんだけど、そういうストイックな人たちは、それで食おうと思うこと自体が難しい。食おうと思うと時代に沿った音楽をしていかないといけないと思うんですよね。

山本:今考えたんですけど、音楽がフリーになるとすれば、音楽を使って商売するってことがないでしょ?そうなれば、レーベルとかがなくなっちゃう?

中村:それはね、なくしませんよ(笑)。

山嵜:難しいところなんだけどね。なんか作ろうとするとお金がかかるからね。
~中略~ まあ、自分の好きな音楽だけで食っていくってかなり難しいんじゃないんですかね。
だからもうさ、みんな、バンド組めばいいんじゃない?面白いしさ。

会場笑

山嵜:だいたいの悩みがバンドを組めば解決するんですよ。

中村:それで悩みが増えることもあるんだけどね(笑)。食うか食わないかを気にしない人はバンドをやれば、楽しい毎日が待ってるかもしれない。

~略・レーベルの宣伝費の話になり~

中村:例えば広告費払って雑誌に載るっていう手は日本ではよくあるけど、今回のtoeアジアツアーでも、ほとんどの人たちは「友達から聞いた」って言ってるわけじゃない?口コミでそれだけ広がってる。あと、YouTubeでtoeのDVDが勝手にアップロードされてて、それも100万回以上見られてる。日本では大手の媒体が“宣伝”をしてるんだけど、アジアではそういう媒体をすっ飛ばしてネットで誰かが勝手に“宣伝”してくれて、toeアジアツアーにあれだけ人が集まるんだよね。

──Q&A

参加者の方からの質問:海外ならではのトラブルはありましたか?

山嵜:気持ち的にはモニターがどうのっていうことは言いたくないんだけど…、モニター環境って結構演奏に影響するんですよね。でも機材はだいたいお願いしてたのはありましたよ。

中村:kowloonの場合はその場の機材でやったりするんで、僕はシンセをミキサーでまとめて現地のアンプにさして。機材に関しては日本の環境とまったく違うと考えて、柔軟に対応できるように準備していった方がいいですね。ぜんぜんちゃんとしてない、と思って行った方が、「なんだ、こんなにちゃんとしてるの?」って思っちゃうから。

……



日本のインディー音楽の話もお2人に語っていただき、ご来場いただいた方には貴重なトークイベントとなったと思う。
私としては、2人の考え方の微妙な違いを知れたことが面白かった。“コミュニケーション”を軸に、自分がどう考え、どう自分で動くか。アジアでライブをしなくとも、今大きく変わろうとしている音楽の世界で何かを表現するには、コミュニケーションやインディペンデントに何かを遂行する力が問われているのではないだろうか。

そして、Offshoreは現在第3回「映像でめぐるアジア」を企画中!
3回目にして、なんと“映像”でめぐらず、イレギュラーに“紙”でめぐるイベントとなる予定。ゲストには元Only Free Paperの石崎孝多さんをお迎えし、「アジアの紙」を実際に触って感じていただける場をつくります。お楽しみに!