海外初ライブを終えた完全にノンフィクションの別所英和は何を感じたのか?

完全にノンフィクションとは、一般市民随一の鬼才、「別所英和」を中心に不特定多数のアーティストで構成されるバンドプロジェクト。8月4日にOffshore山本佳奈子のコーディネイトで台湾でライブを敢行した。
Offshore: アジアでライブをする方法:実践編ー完全にノンフィクションの場合
http://www.offshore-mcc.net/2012/08/blog-post.html

大阪某飲み屋にて、ロングインタビュー。facebookとtwitter、ステージ上でのこと、ライブ後の物販で感じたこと、そして帰国後の心境の変化まで。そこから別所英和は何を吸収したのか。





■完全にノンフィクションが台湾でライブをしたきっかけ
「時代は、海外も行って当然、という空気になってる気はします。」

山本佳奈子(Offshore※以下、山本):あらためて聞くけど、どうして日本じゃない海外でライブをしようと?

別所英和(完全にノンフィクション※以下、別所):2011年5月にCDを発売して、そのときにリリースツアーとして東名阪に神出鬼没に現れるというスタンスでライブをやったんです。その感覚で、神出鬼没に海外でライブやりたいなと。日本と海外を分けて考えるのではなくて、海外でのライブも日本のライブの延長線上にあるんじゃないかと。

山本:普通のバンドって、海外でライブしよう、ってまず頭に思い浮かばないよね?それが、具体的に「海外でもやろう」というきっかけは?

別所:日本の音楽シーンってアジア行って当たり前な風潮になりつつあると思うんです。DIYでバンドやってる人も、レーベルに所属してるバンドも。音楽関係の企業がアジアに手を付け始めているから。

山本:ヨーロッパとかじゃなくてアジア、ってなった理由は?近いから?

別所:物理的に近いのと、金銭的なところもありますし。あと、コード感だったり、アジアの人とは人種が一緒なだけに感覚が似てるんじゃないかなと。完全にノンフィクションは東洋のロックだと思ってるんで。逆に、珍しさを見せるという意味で欧米に行ってみたいというのもあるんですけど、今回はまずは現実的な理由でアジアに目が向きましたね。あと、とにかく、自分のいる位置でやってる他のバンドと差を付けたかった。自分でレーベルを設立して自分でやってるバンドとしては、自分で出来る事は自分でやろう、と思って。

山本:で、アジアに行きたいという事を別所くんがY氏に相談すると。Y氏は完全にノンフィクションの音源の流通を手伝ってくれていて、私とY氏の付き合いは長い。確か、扇町で数年ぶりにY氏と会って飲んでて。たまたま話の流れで、「こういうバンドがいてて、アジアに行きたいって言ってるねん。どう思う?」と。私は「今は日本人が向こう行ってすぐに注目を集める訳でもないし、向こうで知られていない状況であればギャラもほぼ出ないと思った方がいいし、まあ、本人がどれだけ行きたいか。それ次第ですよ。」と話して。そんなきっかけから紹介してもらいましたよね。で、私と別所くんはY氏がいなければ出会わなかったと思うんだけど、最初、私のことどんな風に聞いてたの?(笑)

別所:そうですね、「自分で足運んでアジアの若者のカルチャーを見て、それを日本に広めようとしていてサイトやってる人がいてて」と聞きました。

山本:(笑)確かに間違ってないです。

別所:たぶんストレートにそのまま山本さんのやってることを教えてもらったと思いますよ。

山本:まあでも、私は今までこういったバンドやアーティストを現地に連れていく、「コーディネイト」という仕事はやっていなかったわけで、そんな初心者になぜ頼もうと?

別所:パイプがあるということは聞いてましたし、Y氏のことなんで、「やっちゃったらいいんじゃない?」みたいな感じで言ってもらって。僕も「やっちゃったらいいか」と思い。それで、やってみた。

山本:それから、何度か会って打ち合わせして。航空券がいくらぐらい、香港・台湾・上海とか、各地にはこういうライブハウスがあって、で、行くなら航空券でこれぐらいの値段がかかって、安宿ならこれぐらいの値段で、で、結局ギャラはないと思っといたほうがいいですよ、と伝えたかと思います。結構な金額だから、実は、私は流れちゃうんじゃないかなと思ってました。正直、そういったシビアな話聞いて、どう思いました?

別所:だいたい話して予想通りでした。壁になるのはやっぱり金銭面。でも、行ってみて自分の目で見ないとわからないんで。特にネガティブに思ったことはないです。ドラムのトシヒロは元々、「海外でライブやりたい」って言ってて。

山本:トシヒロくん、楽しそうだったよね。言葉に出さないけど。

別所:アイツにとっては、全世界が自分の世界なんですよね。あと、時代は、海外も行って当然、という空気になってる気はします。そういったことは元からトシヒロと話していたんで。トシヒロはインドに旅行行って死にそうになったりしてたこともあったし、その後もスペイン行ったり。海外への興味は、トシヒロの影響があるかもしれないです。島国で育った日本人特有の固定概念に凝り固まってるのはもったいないなと思ってます。

山本:じゃあ、私と打ち合わせてその話を台湾でライブしたメンバー、トシヒロくんと上野くんに話して、2人はどういう反応だった?

別所:何をしにいくのかはっきりしよう、という話はしました。最初、透明雑誌と対バンしたい、というトピックも出ていたので、上野くんはそこにこだわっていましたね。

山本:そこは本当に私の力不足で申し訳ない。ただ、別所くんはたぶん、対バン相手にこだわってる感じでもなかったよね。私が透明雑誌にコンタクトを取ってると、航空券取るのが間に合わないと判断して、とりあえず誰とでも良いからとにかくライブをするということで妥協しませんか?と打診したときに、別所くんはすんなりとそれを飲み込んでくれた。

別所:完全のノンフィクションって僕自身のプロジェクトなんで、メンバーに不透明になってしまう部分もあって難しいんですけど、僕としては、まずは海外でライブをしたという経験を持って、その場を映像におさめたかったんですよね。

■facebookページを持つこと
facebookとtwitterの特性の違いについて

山本:でも結局、透明雑誌と対バンできなくても、単にライブをするということをみんなで楽しめたというか。あと、現状、お客さんの数は少なかったけど、お客さんのキャラクターが日本とまったく違った。当初打ち合わせの頃に描いてた理想と、終わってからの現実と、いろいろあったと思うんだけど、どうだった?

別所:透明雑誌とやりたい、って思ったのは、CD屋で透明雑誌と完全にノンフィクションが一緒に並べられている事がよくあったことからなんです。一緒にできれば面白いんじゃないかと思っていただけで。でもライブをするっていうことは、大都市でも地方でも、同じように自分のライブを見せるというのが本質な訳で。
純粋にライブをやる、ということを終えた結果、どういう経緯で広まっていったのかはわからないんですけど、完全にノンフィクションのfacebookページに“いいね!”を押してくれているのは半分が台湾人だっていう(笑)。とりあえず一歩踏み出すというのが大きい、と、島国から出ると思いました。やればやるだけ、反応をもらえるんじゃないかなと。ライブの後も、facebookでメッセージもらいましたしね。

山本:台湾でライブ見た人が、facebookで直接メッセージを?

別所:そうです。英語で「すごい面白い曲で、タイトでエモーショナルで、興奮しました」と。「また来て欲しい。頑張って」って。

山本:ダイレクトに来るっていいね。日本じゃなかなかダイレクトに感想くれる人いないだろうし。

別所:そういうダイレクトな反応をもらうことで、やればやるほどいいんじゃないかなと、無駄なことなんてないと思いましたね。

山本:台湾ライブ終わってから、facebookページが功を奏したね。

別所:今も徐々にfacebookページに“いいね!”してくれる人が増えていますね。

山本:台湾のライブの日程が決まったときに、私が「絶対facebookページは作るべきだ」って提案して。それで一緒にfacebookページを作って仕組みを説明して。でも、台湾でライブをする前って、日本人はなかなかfacebookを使わないし、完全にノンフィクションのfacebookページに動きがなかったじゃないですか。だから、あれだけ「作れ」って言ったものの、「なんでfacebookページ作れって言われたんだろう?」って別所くんが思ってるんじゃないかなと不安になってた(笑)。

完全にノンフィクションfacebookページ
http://www.facebook.com/kanzenninonfiction


別所:webとtwitterとは別で、世界発信向けにfacebook、というのは納得してましたよ。

山本:台湾って特にわかりやすくて、facebookがほとんどの情報源になってる。日本のように、ナタリーとかCINRAとかどでかいメディアがあって情報が共有されてるんじゃないんですよね。そういう巨大なwebメディアがほとんどなくて、みんな、facebookで友人やfacebookページから情報を集めてる。そこからの情報がきっかけでイベントに行ったりするんですよね、台湾の人たちは。

別所:そんなfacebookを体感しましたね。

山本:そう、台湾のライブ終わってから、facebookページのタイトルに「(中文:完全非虚構)」って入れたよね。あれ、やるなあ、と思って。


別所:あれはウケようと思ってやりましたね(笑)。“いいね!”増えました。

山本:私は日本のインディーバンドって近い存在じゃなくて、数少ない知ってるバンドも、完全にノンフィクションよりもう少し上の世代になってくる。その辺の人たちはもう今さらfacebook使わずとも、すでにある程度有名なバンドだったり有名なプレイヤーがいるバンドだったりしてて。そういう人たちはfacebookでプロモーションするっていうことの意義や方法を知らなくても良いかもしれない。

別所:むしろ、今日本のバンドで、facebookを使ってプロモーションするっていうことを真剣に考えているバンドは少ないかもしれない。

山本:周りのバンドとか、facebookを重要視してないの?

別所:ないですね。だいたいみんなtwitterでプロモーションやってます。それこそ日本では巨大なメディアのほうが影響力ありますしね。台湾におけるfacebookの影響力を見て、誰かのやってる事が、「いいな」と思った人によって口コミで広がっていってシェアされるって、健全だなと思いました。そしてインターネットだし、口コミよりも速いですよね。

山本:私も普段の活動でfacebookにはすごく助けられてるんだけど、日本の中だけでやってる人にはなかなか理解してもらえないんですよね。

別所:今の日本におけるfacebookって、mixiを今やってない人が、写真をあげたりテキストをあげたり、mixiに似たことをできるSNS、という捉えられ方かもしれないですね。日記代わりというか。

山本:今バンド周りはmixi続けてる?

別所:昔はみんなやってましたけど、今はぜんぜん活発じゃないですね。

山本:じゃあみんなtwitter?

別所:twitterですね。twitterって、自分のTL上に流れているものを見てると自分に「人気がある」とか勘違いしてしまう瞬間があるような気がするんですよね。

山本:自分を過大評価されているような?

別所:そうです。自分のバンドがライブやって、その感想を検索できちゃうわけじゃないですか。それを誰かがリツイートするんですよね。そういったことで盛り上がってるように見せようとする人もいるし、盛り上がってると勘違いする人もいるし。お客さんも錯覚するんじゃないかなと思います。音楽の質を落としていくこともあるんじゃないかなと思いますし、バンドにとっても良くないかもしれない。twitterでアイドルを育成していくような空気が、今の日本のtwitterにはある気がします。ただ、それも口コミのひとつなんで、良いとも悪いとも言えない。
今は、facebookとtwitterを使い分けていて、twitterは日本用、Facebookは海外用と思っています。twitterを使うということも日本の文化のひとつなんで、情報に惑わされないように戦ってます。

山本:私はもう最近twitterって昔ほど見なくなってて、情報量が増えすぎるから。タイムラインがtwitterは速すぎるんですよね。プラス、140文字では語弊があることが多い。facebookはテキストと動画と画像をビジュアル的に見せられる。twitterもそれはできるんですけど、見え方が違う。そんなわけで私は最近facebookに時間は割いてもtwitterは見なくなってるかな。

別所:確かにfacebookのほうが可能性を感じますよね。twitterの限界はあると思います。

山本:でも海外にライブ行くってことでfacebookを実際に使って理解するという経験ができたことが、あのときあれだけfacebookをプッシュした甲斐があったなと。

別所:なってますね。本来のfacebookの使い方の正解はわからないけど、自分がこういう風に使おうっていうのは見えたんで。今後も継続して使って行こうと思ってます。これ、いい話ですね。facebookとtwitter。

山本:そう、いい話。でも、例えばこの記事をアップして、バンドやってる人でfacebookあまり使ってない人が見てくれたとしても、facebookってweb上のインタラクティブなツールだから、実際に使わないとわからないんだよね。そこがもどかしいというか。

別所:けど、他のバンドは使ってくれなくてもいいですよ。僕が先をいってるということで(笑)。

山本:そっか(笑)。じゃあ、台湾に行ったときのことを思い出しましょう。関空で待ち合わせて、JETSTARに乗って、台北着いて、宿にチェックインして。ドミトリーだったけど、安宿はアリだった?

別所:上野くんだけは「うわ、こんなとこなんや」って言ってましたけどね。僕たちだけじゃなくて大学生の2人も同じ部屋で、その大学生が出ていったときに「今度来るときはちゃんとしたとこ取ろうな。」って言って。最初なんの話かピンと来なかったけど、「あ、宿のこと言ってるのか」と。でも最後に上野くんは、そのドミトリーの部屋も居心地よくなったらしく「気に入った」とか言ってましたけどね。


■台北と日本、都市における音楽環境の違い
「場所が違っても自分の世界がちゃんとあればいいんだなと。そうしておけば、海を越えても怖くないし通用するんじゃないかと。」

山本:1日目の夜、師大路行ってみたけどどうだった?みんなあそこは下北沢っぽいって言うんだけど、私は下北沢にあまり行かないから実際のところどうなんだろうと思うときもあって。

別所:下北沢に近いっちゃ近いんじゃないですかね。でも、こう、街全体がたまり場になってるような印象を受けました。

山本:地下社會の入り口も見て。地下社會でライブやりたかったよね。

別所:そうですね。あそこでライブしたかったです。

地下社會
台北で若者が多いストリート師大路に位置するライブハウス。キャパは100人ほど。
当初、完全にノンフィクションは地下社會でライブする予定だったが、地下社會に消防法のチェックが入り、営業停止処分。すでにフィックスの航空券を手配していたので、地下社會ブッキング担当のChosenに新しいヴェニューを探してもらい、PIPEというライブハウスでライブすることとなった。


山本:でももう再度オープンして始まってるらしいです。ウワサによると、消防法では出入り口が2つないといけないらしいんだけど、地下社會には1つしか出入り口がない。そういう理由でいきなり営業停止を食らって、今はどう解決したのかは知らないけど再開したと。
で、師大路でごはん食べた後、ちょっとたまってる人たちにチラシを配って。みんな疲れてる所に営業活動させて申し訳ないなと思いつつ。あれが効果あるかわからないし実際なかったかもしれないけど、やったか、やってないか、だったら、「やった」のほうがいいはずだと思ったから、私も投げやりに「チラシ配るよー」って。

別所:そこで一番がんばってくれたのがやっぱり上野くんで(笑)。
あのとき僕の疲れがピークで、上野くんはそういうところに気づいてフォローしてくれるんですよね。わかってくれてるんだなあ、と。

山本:で、2日目朝、なぜか上野くんが美容院で髪の毛を切ってモミアゲがなくなって。昼に集合して西門をうろうろして、中山の中華料理屋で料理を食べて。

別所:あの中華料理が美味かった。めっちゃ美味かった。


山本:そこでやっといくつか台北のエリアをまわったわけだけど、台北の街についてどう思った?音楽関係なしに。

別所:台北市内って密集してるけど、それぞれのエリアで雰囲気が違うなあと思いました。

山本:私はもう新鮮味がなくなってきてるから、初めて台北行った人にとってはどうなのかな、と。

別所:西門は渋谷っぽい感じがしましたね。


山本:原宿って言われたりするけどね。

別所:西門は僕にとっては原宿より渋谷なイメージでしたね。で、中山は新宿っぽい。

山本:地下鉄も乗ってね。

別所:地下鉄が面白いと思ったのは、何時何分に電車が来る、っていう表示じゃなくて、「あと何分で電車が来る」って言う表示なんだなあと。

山本:そう。日本ぐらいだよね、こんなカチカチ何時何分の電車を待ってるのって。電車なんて待ってりゃ来るんだからね。

別所:あれはなんかいいっすよね。

山本:で、ライブ。音環境はやっぱり悪かった?

別所:やりづらかったです。中音は聴こえてるんですけど、中音でボーカルマイクが途切れるんですよ。出順もびっくりでしたよね。対バンのSonic Dead Horseが忘れ物したから順番代わって、って(笑)。
リハ終わって30分で本番でしたからね。けど、深夜で終電もない時間なのに、人が入ってきてましたよね。


山本:街のコンパクトさがたぶん良くて。例えばあれが香港だと、香港なんて24時間バスが走ってるから、終電なんて気にしなくて良い。台湾もあれだけ街がコンパクトでタクシーも高くないから、あの時間でもさほどネックじゃないよね。日本は終電なくすと大金はたいてタクシー乗るか、朝まで遊ぶか、だから。

別所:みんな深夜のイベントに来たみたいな覚悟で来てるんじゃなくて、ふらっと来てましたよね。

山本:今の日本のバンドライブ界隈は、「そのバンドを見に来る」っていうお客さんが多い?それともイベントを見に来るの?

別所:シーンによりけりですけどね。この前出たETERNAL ROCK CITYとかだと、イベント全体を見にきてる人が多い。ただ、例えば日本で、前の僕たちの台湾のライブとまるまる同じシチュエーションがあったら、どう考えても客ゼロですよ。海外から来たよくわからないバンドのライブが終電終わった頃にあったとして。日本じゃ誰も見に行かないですよね。みんな家で寝てますよ。

山本:完全にノンフィクションのライブが終わって、私はその後、台湾で下北沢世代の店で展示をしたりするんだけど、そこですごい人数が来てくれて。台湾の若い人たちって、「今まで見たことないものを見たい」っていう積極的な姿勢がある。自分が知らないことを知ることに貪欲というか。下北沢世代でそれを経験して、完全にノンフィクションの台湾でのライブにも繋がる共通点だなと思った。
日本って何もかも飽和してるから、そういう環境がうらやましいなと思っちゃいますね。

別所:僕はそういう積極的なノリが良い意味でカルチャーショックでした。今までは欧米人だけがそういうノリなんじゃないかなと思ってたけど、日本以外、アジアも含めて日本以外がそういう気質なんじゃないかなと。台湾も島なんですけどね。帰ってきてから思いました。ほんま海外行って帰ってきて感化された大学生みたいなこと言ってますけど(笑)。
自分が育ってきた環境で培ってきたもの、それと、こうやって外に出て得られるもの。それを並べてみて、どっちが正しいって言うのはないんで。どっちも良いところがあるんで、どううまくやるのがいいのかな、って考えてるんですけど。考えた結果、自分が世界やな、と。

山本:

別所:自分を持つって言うことがどれだけ大事かわかりました。

山本:環境うんぬんじゃなくて。

別所:そう。場所が違っても自分の世界がちゃんとあればいいんだなと。そうしておけば、海を越えても怖くないし通用するんじゃないかと。そういったマインド的なところで、今回の経験を経て強くなった気がします。

山本:私は実は今まで台湾ちょっと苦手だった。アンチ島国日本みたいなことを思ってる私からしたら、台湾の人っていきなり「日本大好き」って言ってくる感じがどうもむずがゆくて。でも今回3週間台湾にいてて思ったのは、台湾でも面白い人って、環境がどうこうじゃなくて、自分で面白いこと、環境を作り出してる。展示やったときも、完全にノンフィクションのライブを見たときも、なんて言うんだろうね、それぞれ好きなように楽しむ人を見てて、どの人も、台湾にいるからどうこう、じゃなくて、自分とまず向き合って自分が何したいかを考えて行動しているんだろうなと。

別所:主張と目的がある。もし台湾に友達が増えていけば、そういう人ばかりではないんだろうけど、でも、基本的にそういうベクトルを持っている土地のような気がしました。
けど、日本の繊細さは、日本独特なので、そこは武器になるだろうと思ってます。いいとこを組み合わせて使っていきたいなと。僕は日本の繊細さや侘び寂びを持っていると思う。台湾の人たちを見て、日本と違ってシンプルで生活も気楽そうだなと思うところもある。その両方を知ってれば、強くなるんじゃないかなと。


山本:じゃあリハの話に戻って。

別所:面白かったですよ。舞台袖で弁当食ってる奴いましたよね。

山本:あのPAスタッフの一人ね。最高だった。

別所:ステージセッティング中にステージで立って弁当食ってた奴。ボスになんか言われて、目ギョロッとさせて。それでもまだ弁当食ってるっていう。マンガでしたよね。
あとやたらスタッフ多かったですよね。みんな大声で、言い方がきつく聞こえたりもしたんですが、結局みんなええ奴らだなと。気配りしてくれて。やたら話しかけてくれるんですよね。ギターを返さないで、って言ったら、すごいオーバーリアクションで「え?!ギター返さないの?!」って。

山本:トシヒロくんはモニターからベース聞こえてたのかな?

別所:ぜんぜんわかんないって言ってましたね。防音されてないライブハウスなんで、音すごい響いてましたしね。ホールみたいな響き方でした。

山本:リハのときは上野くんテンション下がってなかった?

別所:いや、上野くんは一晩寝て、そこからはテンション上がりっぱなしでしたよ。部屋見たときがテンションの底辺で。

山本:わかりやすい!じゃあ、台湾のお客さん、どうだった?あのお客さんたち、おそらく、普段完全にノンフィクションみたいな音楽聞いてないと思うんだけどね。

別所:そうですね。前回のインタビューで答えた通り、楽しみにかかってきてくれるというか、受け入れてくれるというか。知らないもの、聞いたことないものなのに。

山本:「日本からわざわざ来てくれて」っていう同情みたいな優しさでもなかったよね。

別所:違いましたね。最初はそういう優しさかなと思ってたんですけど、違いますね。単純に、ステージでなんかをやる人たち、そのステージ上の出来事を楽しもうと来てくれている感じというか。あとうれしかったのが、アンコールがあったこと。

山本:まさかのアンコールね。

別所:あれは「やった」と思いましたね。


山本:リハの最後の最後に、私が「外音でキックとベースがまったく聞こえない」って言ったよね。で、本番、リハよりかはキックとベースは出てた。お客さんが入って若干ハイが吸収されてただけかもしれないけど。でも、この音、日本じゃありえないなーと思いながら見てて。音が悪い状況で、でも、お客さんが楽しんでる。PAやハコのシステムの音の善し悪しは関係なく、3人の音はしっかりしていた。伝えにくいけど、3人で作る音のパワーが、この音環境の中でも伝わればいいなと思ってたんだけど、お客さんはやっぱりそこに気づいてたと思う。環境とPAがつくる音の善し悪しじゃなくて、3人の本来の音をちゃんと聴いてくれてたんじゃないかなと。日本の実力あるバンドが演奏している、ということは伝わってた感触がある。それでほっとしましたね。

別所:それは本当に良かったです。あと、音楽人として感動したのが、みんなCD買わないってとこでしたね。日本は物販でCDを売ろうとしてるところがあるけど、台湾でのライブでは、「これ、iTunesで売ってないの?」って聞かれる。世界はもうiTunesとかダウンロード販売にシフトしてるんだなと。iTunesで売ってる、と話すと、じゃあiTunesで買うわ、と。

山本:なるほどね。

別所:CDは日本の価格設定の半額ぐらいで売ったんですよ。ミニアルバムも700円ぐらいに設定して。対バンのSonic Dead Horseは買っていってくれたんだけど、彼はものすごく音楽好きだし、自分で音楽やってるし、そういう人だと物体としてコレクションしたいのかなと。オーディエンス側の人たちには、もうわざわざカセットテープを買うみたいな感覚になってるのかも。CD買わない、っていうだけじゃなくて、iTunesでは買うんだと。CDがどういう立場にあるのか、ちょっと気になりましたね。CD屋行きましたけど、ほとんどが日本のCDでしたし。

山本:じゃあ次回リリースの時はダウンロード販売はする?

別所:もちろん続けていきたいですね。「iTunesでは売ってないよ」って言ったライブ会場限定のEPは、このときたった日本円で100円ぐらいに設定して販売してたけど、買ってもらえなかったです。

山本:例えばジャンルが違えばまた状況が違うかもしれないんだよね。国によってもちょっと状況が違うだろうし。香港だと、私の読みでは、もうちょっとCDが売れるような気もする。あと、台湾はINDIEVOXっていうサイトがあって、インディー音楽の情報収集やダウンロードができる。iTunes Music Storeの代わりがINDIEVOXみたいな。だから台湾のインディーファンの間ではダウンロードで買うのが主流かも。

別所:どっちみちCDっていう選択をしないのかも。

山本:インディーのCDショップなんて、White Wabbit Recordsぐらいだから。1軒しかないっていうのがそういう状況を物語ってるかもね。

別所:あと、神戸出身の日本人の方が、日本で見たことなかったけどバンド名は知ってくれてて、台湾に出張のついでに見にきてくれたっていうのがうれしかったですね。ほんと、気持ちよくライブできました。スタッフの人たちも話すとみんな気さくで。

■海外ライブ後の変化
「オーディエンスとコミュニケーションを取るライブをしたいです。」

山本:あと、私は今までアジアでライブをしたインストバンドの状況しか見てなかった。思いっきり日本語歌詞が乗ってて、しかも独特な日本語を乗せてる完全にノンフィクション。その歌詞の世界観がまったく伝わらないんじゃないかと不安だったけど、なんとなく伝わってた気がするんですよね。

別所:音楽って歌詞があってもやっぱり言語を越えた文化、アートなんだなと思います。

山本:終わって、あとのメンバー2人とはどんな話した?

別所:上野くんとは、日本と台湾の違いみたいなことをずっと話してましたね。トシヒロは、「次は香港行きたい」って言ってます。次のライブは香港・台湾でやりたいですね。ライブの後も、Chosen(地下社會スタッフで、今回のライブをブッキングしてくれた。)が「今度いつ来るの?」って何回も聞いてくれて。来年には行きたいですね。


山本:あの後、ライブのやり方が変わった、とかある?

別所:それはやっぱり、自分の世界だな、と。アピールの仕方が、エンターテイメント性高くなってきたんじゃないかなと思います。一方的に提示するだけじゃなくて、コミュニケーションと言うか。

山本:オーディエンスと?

別所:そう、オーディエンスと。台湾でのライブは、消極的だったと思います。ただやってることを見せようとしていたと思います。台湾行く前からそういったことを考えだしたので、台湾のライブを経て、それをより意識するようになりました。
世界的に活躍するミュージシャンって一様にそうだと思うんですよ。エンターテイメントでありオーディエンスとの関わり方がうまい。一方的にこちらが演奏して、オーディエンスが一方的に楽しんでくれている感じよりも、オーディエンスと意思疎通をしていきたいというか。オーディエンスとコミュニケーションを取るライブをしたいです。楽曲の提示だけがライブじゃないので。
具体的に言うと、コールアンドレスポンスを増やしていったりして、愛情を持って良い空間を作っていこうと。ちょっと難しいことなんですけどね。

山本:お客さんを理解しようとしたり、お客さんに歩み寄る、みたいな感覚なのかな?

別所:この前、サマソニ行ったんですよ。台湾行った後で。どんな環境であれ「自分が世界だ」という意識になってる中で海外からのいろんなバンドを見ると、また違いました。グリーンデイが特にすごいなと思って。パンクっていう音楽をやっていながらも、大衆を見事に楽しませていて。すごくお客さんのことを考えてやってるんだろうなと。これがエンターテイナーだなと。お客さんのことを楽しませるって、すごく難しいんですけどね。

山本:まあでも確かに、ライブがなんなんだっていうと、単にその人の音楽を生で聴けるという以上に、その場をそのアーティストとお客さんが共有してる訳だから、だったら、アーティストにはライブと言うかショウを見せて欲しいよね。

別所:舞台を見にいくって言う感じが近いのかもしれませんね。エンターテイメント性に惹かれました。完全にノンフィクションって、ヒーローになりたいって思ってるんですよ。通にウケたいんじゃなくて、大衆にウケたい。ヒーローっていう要素の中にはカリスマ性とかもあると思うんですけど、ヒーローの要素をつくるひとつのうちにそういうエンターテイメント性が含まれるなと。まあ、とにかく、お客さんを楽しませるライブをしたいです。

山本:CDが売れないからライブって言われたりもするわけで、そのライブにどうやってお客さんを集めるかと言うと、お客さんは楽しくなければライブを見にいこうと思わない訳で。なんかそういうストレートな方向に別所くんの目標が向かったって言うのはよかったなと。

別所:だから、完全にノンフィクションの続きはまだまだあります。アメリカ人とかヨーロッパの人に、「空気」コールさせてみたいですね。

山本:別所くんにプラスになってほんと良かった。

別所:いろいろ吸収しましたよ。

山本:じゃあ、次は香港と台湾で。

別所:そうですね。台湾はリベンジで。


インタビュー・構成・テキスト:山本佳奈子


完全にノンフィクション ライブ情報
2012年11月22日(木)下北沢CLUB Que ー action!!! vol.28
2012年12月8日(土)大阪扇町para-dice ー JAPANESE UNKNOWN TOWN TOUR WEST FINAL
「GIG OF ONLY 完全にノンフィクション」※facebook特典あり。
http://www.kznf.net/