【SPACES FILE】マカオの本・音楽セレクトショップPinto Livros & Musica

マカオと言えばカジノと文化遺産。通常の観光ルートであれば、市の中心地セナド広場は外さないだろう。ポルトガル建築に囲まれ綺麗な石畳が敷かれたセナド広場は、観光を始める拠点であり、毎日たくさんの観光客でごった返す。
もし、セナド広場に行くならば、1軒立ち寄ってほしいショップがある。感性を刺激する、素敵なセレクトショップがある。スターバックスコーヒーに向かって右手、永興ビルの2階・3階(現地表示では1F・2F)にあるPinto Livros & Musica。Livroはポルトガル語で“本”、Musicaはもちろん“音楽”。中華圏の本や、世界の音楽がセレクトされたショップ。

>>>スターバックスの右手、ビルの入り口に掲げられた猫の看板が目印。この階段を上る。

Pintoオーナーの一人、Ansonはマカオ出身、現在は台湾に住みながらマカオのショップを経営する。彼にはこの夏、二度会った。最初は台湾でゆっくりと話しながら台湾料理を食べて、その約2週間後にマカオの街を案内してもらった。
マカオと台湾に精通しているAnsonは、現在のアジアの経済や社会状況も交えながら、マカオを案内してくれた。彼とどんな会話をしたのかは、また近々発行する紙のzineに書くとして、今回は彼のショップを紹介する。


2階はPinto Livros。マカオの出版はもちろん、台湾、香港、中国大陸などから、小説・エッセイ・雑誌・zineまで。3階のPinto Musicaにはマカオローカルインディー音楽のCDもあるので見逃してはいけない。ヨーロッパの電子音響や現代音楽も取り扱われている。どちらのショップでも、上映会やイベントが行なわれることがある。クリエイティビティに興味のある地元の人が集まる絶好の場所。ドア前のチラシスペースでマカオのアート・カルチャー情報を収集することもできるだろう。3階Pinto Musicaではコーヒーやドリンクを飲んで落ち着くことも可能。

>>>Pinto Musica入り口ドア。

具体的にどんな本・音楽が扱われているのか、詳しく知りたい人はPinto Livros & Musicaのfacebookページか、
http://www.facebook.com/pintolivros
Pinto Musicaのfacebookグループを参考に。
http://www.facebook.com/groups/152129661594972/

Pinto Livros & Musica
澳門議事亭前地31號永興大廈1A (1A, Veng Heng Largo do Senado, 31, Macao)
tel. (853)28330909
営業時間:
Pinto Livros
日〜木/11:30~21:00
金・土/11:30~22:00
Pinto Musica
日〜木/13:00~21:00
金・土/13:00~22:00


10年間、台湾に住みながらマカオのショップ経営をしてきたAnsonは、マカオのクリエイティビティを発展させようと、たくさんの良い本と音楽を提案してきた。そこでカジノが増え続けるのと時を同じくして、彼はマカオのクリエイティビティを支えて育んでいる。以下、Pinto Livros & MusicaオーナーのAnsonへの質問。



──Pinto Livros & Musicaはいつオープンしたのですか?
2003年、当時は私を含めて4人のパートナーでスタートしました。来年2013年に10周年となります。
私はPintoを始める前までは台湾の誠品書店で働いていました。4年間在籍していたうち、最初の2年は営業部門、後半の2年は、音楽部門にいました。当初は誠品書店は書籍しか販売しておらず、私は誠品の音楽部門立ち上げスタッフでした。

──Pinto Livros & Musicaをスタートさせた理由を聞かせてください。
マカオの人たちに、世界には素晴らしい作品がたくさんあることを知ってもらいたくて始めました。やはりマカオでも一般的な音楽や本しか知らない人が大半ですから。そして、こういった、まだ知られていないけれど良いものを店として発信し続けることが重要だと思っています。もう約10年Pintoを続けていますから、マカオの若者の成長を見てきたとも言えます。マカオの若い人たちに刺激を与えて、良い作家やアーティストをマカオから生み出すことができれば、海外からマカオへの注目度もあがると信じています。カジノ以外のマカオを知ってもらえるひとつの方法です。
カジノはマカオとマカオの人たちを潤わせています。マカオは今、他国のように、失業率が高い、就職率が悪いなんてことはありません。カジノで働けば充分な給料がもらえます。カジノ産業で裕福になっているうちに、文化面では近隣のアジア諸国に差をつけられていると感じますね。特に現在の東南アジアのアート・カルチャーの発展は目をみはるものがあります。今は東南アジアの音楽や映画を紹介することにも力を注いでいます。


──店のラインナップのセレクトは誰がやっているのですか?
Pinto Musicaに関しては100%私が選んでいます。Pinto Livrosに関しても、概ね私がセレクトしていますが、もう一人のパートナーも一部セレクトしています。本に関しては言語の問題がありますし、中華圏からの本ばかりとなってしまいますね。

>>>Pinto Livros店内。約30平米ほどの小さな店内だからこそ、気になるジャンルのコーナーで様々な関連本が見つかる。特に雑誌コーナーは中華圏のハイクオリティな雑誌が取り揃えてある為、中国や台湾に行けずとも良い情報入手手段となるだろう。

──先日は台湾で会って話しましたけど、あのときは正直、なぜAnsonが台湾に住んでいるのかわからなかった。でも、あのあと北京、香港・マカオと旅を続けていて理解できました。やっぱり台湾は文化・芸術面で非常に豊かな国です。
そうですね。私はマカオでPinto Livros & Musicaを経営しながら、台湾で情報を収集しています。経済に関しては、台湾の方が大卒初任給は格段に低いし、台湾の産業もここ数年伸びていません。ですが、台湾はこの周辺の地域で一番芸術や文化が生まれやすい環境をもっています。経済状況が良いと文化が育ち難いのか?皮肉なものです。現在は台北に住んでいますが、数ヶ月に1度はマカオに帰りますし、Pintoのスタッフとはインターネットで頻繁に連絡を取るようにしています。

>>>Pinto Musica店内。取り扱いCDの種類は多くはないが、左手奥にマカオローカルアーティストのコーナーがある。先日、日本でも流通販売されたEvadeももちろん販売されている。Raster NortonやPROGRESSIVE FORM関連の音源も取り扱われる。

──今後のプランはありますか?
いろいろ考えています。来年は10周年ですから、いくつかイベントを行なう予定です。普段からLivrosでもMusicaでもワークショップやトークセッションは行なっていますから、今後もそれは続けていきますね。本屋、CD屋と言っても、販売という業務だけでは、もう店は成立しません。今は本屋でもレコード店でも、イベントを行ったり何かプラスアルファがあるのが通常ですよね。出版もやっていますが、まだまだ出版した数は少ないです。出版にも少しずつ力を入れていきたいと思います。
あと、10周年に向けて、店舗のロゴやイメージデザインを変える予定です。店のセレクトに関しても、ブランディングしていかなければと、今、真剣に取り組んでいます。例えばMusicaには地元アーティストのグッズを選別せず取り扱っているコーナーもあります。狭いマカオですから、なかなか断るというのも難しい話で(笑)。ただ、店舗のイメージやデザインを完璧なものに近づけていくには、地元アーティストの作品でも断ることが必要かもしれない。私自身、ブランディングは店にとって重要な仕事だと思っていますから、現在、Pintoのイメージを自分が思い描いたものに近づけるために着々と動いています。



>>>夜のマカオ路地。



インタビュー・文章:山本佳奈子