sgt.× Desktop Error 国を越え互いのホームで共演したバンド、環境の違いと未来の展望

左よりBird(Desktop Error)、明石興司(sgt.)、Lek、Meng、Aof(Desktop Error)


ポスト・インストロックバンドsgt.は2月22日、Desktop Errorの2ndアルバムリリースパーティーに出演。2013年8月に、『Desktop Error JAPAN TOUR in TOKYO』でも共演したsgt.とDesktop Error。日本東京とタイバンコク、計2回の共演を経て、国は違えど長く活動するインディーバンド同志、ゆっくり話してみましょうという対談の機会を設けてみました。




Introduction…
Desktop Errorはタイのオルタナティブロックバンド。2013年11月にリリースした2ndアルバム『Keep looking at the window』のリリースパーティーを、Mongkol RCA Studioにて開催。500人キャパシティの会場がほぼ埋め尽くされた。会場は、日本に存在するライブハウスのようなステージ、音響設備、照明設備が常設されたところではなく、元映画館の空間。そこに音響機材、照明機材、ステージが運び込まれ、この日のライブは行なわれた。Desktop Errorの所属レーベルSO::ON Dry Flowerの企画制作により開催されたこのイベント。地元バンコクからはZweedz n' Roll、そしてDesktop Errorと日本で共演したsgt.が招かれ演奏した。オフィシャルFacebookページで約50,000人のフォロワー数を持つDesktop Errorのコンサートを見る為に、Desktop Errorのファンがたくさん集まった。彼らの人気曲では会場で大合唱が巻き起こり、バンコクで地道に活動してきた彼らの強さを見せつけるライブとなった。

また、sgt.はまったくバンコクで知られていなかったバンドだが、バンコクのオーディエンス達はsgt.の安定したパワフルな演奏と美しいバイオリンの旋律に魅了されていた。ステージから鳴らされる一音一音を真剣に聴き、次は何が起こるのかと息をのんで見つめるオーディエンス達の表情が非常に印象的だった。「あ、sgt.が行くなら私も行きます」と軽いノリでついていった私Offshore山本も、同じ日本人として思わず感動。確かに、日本でsgt.は有名なバンドと言うよりも“知る人ぞ知る”実力派のバンド。メディアで大きく取り上げられるバンドではないが、その長い経験が裏付ける圧巻のライブには、誰しも魅了される。sgt.初のバンコクでのパフォーマンス終了後、sgt.の物販はCD購入とサイン攻めで大忙し。大きな人だかりがイベント終了時まで続き、イベントの最中はsgt.の面々とほとんど話すこともできなかった。

この対談は、バンコクでのライブ翌日に敢行。sgt.の核となる人物、Ba.明石興司氏と、sgt.の長きにわたる活動を支えてきた、sgt.自主レーベルPenguinmarket Recordsの共同オーナー北澤学氏、そしてDesktop ErrorからはLek、Aof、Meng、Birdの4人、Desktop Error所属レーベルSO::ON Dry Flowerオーナーで彼らのサウンドエンジニアである清水宏一氏、そしてOffshoreの山本佳奈子が参加し、ゆるい雰囲気で行ないました。


sgt. バンコクでの演奏。『ライマンアルファの森』
最初の一音を鳴らした瞬間からオーディエンスの驚きが伝わる。照明はバンコクを中心に数々の舞台芸術、舞台照明プロジェクトで活躍するDuck Unit。sgt.の気迫溢れるパフォーマンスをシンプルなライティングで引き立てる。


■タイでのDesktop Errorの実力

Offshore 山本佳奈子(以下、山本):sgt.明石さん、昨日ライブどうでした?

sgt. 明石興司(以下、明石):総括すると、Desktop Errorの計り知れない未来を感じたと言いますか。彼らのタイでの実績、あとオーディエンスを楽しませる力を感じました。


Desktop Errorの人気曲“Kor”で巻き起こったオーディエンスの大合唱(1st Album『TICKET TO HOME』に収録)

山本:香港と比べてみての違いもあると思うんですけど、香港は少し日本と規模や雰囲気が似てるというか。
(sgt.はこの前日に香港Hidden Agendaにて、White Noise Records主催のイベントでライブを行なっていた。)


香港Hidden Agendaでのsgt.パフォーマンス。『銀河を壊して発電所を創れ』

明石:でも万国共通で、お客さんの新しいものを求める姿は一緒かなと感じました。ライブをやっている最中も、こっちがやった分、お客さんからエネルギーが返ってくる感じがあって。日本はライブやイベントが当たり前の事になりつつあるから。

Desktop Error Gt. Aof(以下、Aof):東京で共演したときもそうだったんですが、sgt.の直後に演奏するのは、プレッシャーを感じてつらかったです。今回も(笑)。

明石:いやいや。でもそう言いつつも、2回ともきちんと素晴らしい演奏やり切ってるじゃないですか。

Desktop Error全員:ありがとうございます。

山本:実は私もタイでDesktop Errorのライブを見たのは初めてで。彼らは日本でも演奏しましたけど、日本とタイではライブの構成を変えてる。その違いを見て、タイのシーンがやっとわかった気がしました。
昨日は結局、450人入ったんでしたっけ?

SO::ON Dry Flower オーナー清水宏一(以下、清水):そう。

明石:すごいですよね、450人って……。日本でsgt.は450人も僕たちだけで集めるなんて、無理だからね!(Desktop Errorのメンバーに向かって)

山本:『生命』(※sgt.が約10年間継続して主催する自主企画イベント)はだいたい何人ぐらい集客されてるんですか?

明石:200から300人ぐらいかな。

Aof:ライブの後、Facebookをチェックしたら、sgt.のライブがすごかった、って書いてる人がたくさんいて、良かったです。

明石:良かった!

Aof:sgt.のことを知らなかった人もたくさん来てたけど、sgt.のライブを見て、みんな「CD買わなきゃ!」ってなってましたね。

■タイと日本、ライブやバンドの数、環境の違い

Desktop Error Vo. Lek:日本とタイのインディーシーンの違いは感じましたか?

明石:なんでしょうね、違い……。違いはないようにも思うけど、タイは環境が大変じゃないですか。日本と比べると。ひとつのライブをする、とか、ひとつのCDをリリースする、とか、そういったひとつひとつのプロジェクトにかなり努力が必要で。日本だとその階段って小さくて、簡単ではないけど昇ろうと思えば昇れちゃうんですよね。そういうひとつのイベントやリリースに対する仕事量の大幅な違いがあるなかで、Desktop Errorの皆さんはしっかりやってるんだな、と思いました。
※タイでは、インディーズレーベルも日本と比べると少ない。Desktop ErrorのCDはSO::ON Dry Flowerより発売されているが流通されていない。タイの小規模CD店やオンラインショップのみでの委託販売となっている。

Lek:日本で集客することが難しかったりするのは、バンドの数が多いからですか?

明石:うーん、バンドの数も関係してると思うし、ハコ(ライブハウス)も多いのかな?あと、イベントの多さ、バンドの多さ……。個人的な見解ですが、期待して行ったイベントが期待値を越えなかった、っていう確率が多くなってるかな?お客さんの期待を越す質の高いイベントが減ってるのかもしれません。想像の範囲で終わってしまう、と言うか。そうなると、今日はしんどいし行かなくていっか、とか、また次もあるだろう、とか思っちゃう人も出てくるかもしれない。特別なライブイベント!っていうその特別感が、日本では少なくなっちゃったかもしれないですね。

山本:まさに、その通りだと思います。

Desktop Error全員:うーん。(納得した様子で)

山本:例えば、昨日、同じ日に似たようなジャンルのライブを別の場所でやってたり、つまりはイベント被ってたりしたんですか?

Lek:被ってたイベントはありました。だいたい週末だと、5つとか6つぐらい、バンコクのどこかでライブイベントがあります。それでも、それぐらいの数しかないから、少ないですね。

明石:数多くなって、イベントとかのクオリティを下げてる日本のバンドが悪い!ってディスる、って言う……(笑)。

Lek:でも、数が多い中でも、良いイベントもありますよね?

明石:もちろんもちろん。あります!良いイベントを目指して、僕らはやってます。

Lek:僕たちも同じです。sgt.は結成して何年ですか?

明石:99年に結成したから、14年ぐらいかな。

(Desktop Errorは結成して7年)

■長くバンドを続けるために、目標を明確にたてること

Lek:長く続けるコツはありますか?

明石:あきらめない!(笑)あとは、目標ですね。常に明確な目標を置いていく。でも、Desktop Errorのみんなもそういう風にやってきたでしょ?

Lek:そうですね。sgt.のみなさんは仕事しながらやってますか?日本のインディーズのバンドはみんな別に仕事をやってるんでしょうか?

明石:もちろん、みんな仕事してます。日本のバンドマンは、手に職があってフリーランスの人もいれば、バイトしながらやってるバンドマンもいます。


Aof:僕たちは結成して7年ですが、日本ではsgt.のように、7年よりもっと活動しているバンドは多いんでしょうか?

明石:いや、少ないね。7年ぐらいを越えると長く続いたりするんだけど。19歳20歳でバンド始めた子が、20代後半になると結婚したり仕事忙しくなってバンド辞めちゃうパターンが多い。タイはどう?

Lek:タイも、人によっていろいろ理由は違うけど似てますね。うちのベースTuiももうすぐ子供が産まれたり。でも続けていきます。

Aof:sgt.は1ヶ月に何本ぐらいライブやってるんですか?

明石:ここ最近は2ヶ月に1本ぐらいかな。あまり多くライブしないようにしてます。

清水:それは理由があるんですか?

明石:まあそれぞれの仕事の都合もあるし、あと、1ヶ月とか2ヶ月に何本もやっちゃうとお客さんがばらけてしまうんで。

Lek:一緒です。

明石:そうそう。ギュッと絞ってやったほうがいいよね。

Lek:バンド内で揉めたりすることはありますか?

明石:あるある。もう、揉め事だらけですよ……。あんまり言えることじゃないからね(笑)。でも話し合って、ちゃんと前に進んできました。

山本:Desktop Errorは揉めるの?

明石:殴り合いとか、ないの?(笑)

Aof:(笑)そこまではないです。

Lek:人間性で喧嘩になることはある(笑)。いや、これは冗談だけど……。

明石:本当に、みんな仲良いよね。その仲の良さを続けていって欲しいです。

山本:バンドを続けるコツに、明確な目標をたてる、と明石さんが話してくれましたが、そのひとつはsgt.が自分たちでオーガナイズする『生命』かな、と思うんです。sgt.ってもう10年も『生命』を続けてきていますよね。今回はDesktop Errorのリリースパーティーということでしたが、Desktop Errorは自分たちが主役になったり、オーガナイズしたりするイベントを今後続けていく予定はある?

Aof:今回ほどの規模ではなく、もう少し小さめの規模ではやってみたいと思ってます。

清水:でもみんなまだそういうことやったことないんですよね。

■タイ国内では、まだバンコクだけ。

Lek:実は、僕たちはまだタイ国内でバンコクでしか演奏する場所がないんです。日本だったら、東京、大阪、他にもいろんな都市があるけど。

清水:タイはこういう音楽って本当にバンコク中心、バンコクでしか成立しなくて、バンコク以外ではシーンがないんですよね。Lekはイサーン(東北地方)出身だけど、そっちに行くと、誰もDesktop Errorのことなんて知らないんです。

明石:そうなんだ!

Lek:sgt.は、東京以外の地方でのライブはどうですか?

明石:うーん、地方の方が集客や反応が良くて東京がダメだったりするケースもあれば、逆のケースもあったり。様々ですね。Desktop Errorのみんながタイの地方も盛り上げて行かないといけないですね(笑)。

Lek:地方の都市でも、大学があるところには、少しインディー音楽を聴く人たちがいます。バンコク出身の子が、チェンマイとか地方の大学に入学して、バンコクで聴かれているインディー音楽を広めてくれたりするんです。

明石:広まると良いですね。ちょっと話は違うけど、昨日メンバーと話してたんですけど、例えばDesktop Errorと日本やアジアを一緒にまわれたら面白いな、って。お互い知ってる土地と知らない土地があるから、それぞれお互いがサポートしあって、お互い広げあうようなことができれば、と。

Lek:アリガトウゴザイマス!(日本語で)

明石:え?いや、僕らも頑張るけど、みんなで頑張ろう、っていう提案で(笑)。

Aof:日本、タイ、香港、台湾とか、違う国出身の4バンドぐらいでアジア中まわれたら面白そうですね。

明石:いいですね!あてになりそうな友達いる?

Aof:いや、まだいない(笑)。もし次の目標をたてるなら、アジアツアーはやりたいと思っています。

Meng:一緒に協力してツアーを作れればいいですね。

明石:でもねー、実現すると、毎晩毎晩、昨日の夜みたいなのが続くからね。毎日朝までね。Desktop Errorのみんな大丈夫かな?

Desktop Error全員:苦笑

Aof:それと、さっき話に出たように、タイ国内ではまだバンコクでしかライブが成功しないので、タイ国内のツアーもやりたいです。これはアジアツアーよりも大変で大きな目標ですね。

山本:sgt.はまたタイにライブしに来ますか?

明石:来ます!今年中にまた来たい。今新しい作品を作っているので、それが完成したらまた来たいです。

Lek:ぜひ来て下さい!

明石:ありがとう!

Lek:オネガイシマス!アリガトウゴザイマス!(日本語で)


sgt. Asia tour digest movie



sgt. official website http://www.sgt-web.net
Desktop Error official facebook page https://www.facebook.com/DesktopError


冒頭テキスト・編集・構成:山本佳奈子(Offshore)
取材協力・対談写真撮影:北澤学(Penguinmarket Records / Bayon production)
Thai-Japanese Translator: Koichi Shimizu (SO::ON Dry Flower)