広告とネットとデザインを味方につける-台湾メディアムーヴメント:Media-Movement in Taiwan

台湾で3月18日に始まった、学生たち主導による国会の占拠。中国とのサービス貿易協定が正当な審議なしに可決されたことがきっかけで始まり、現在までの最大の集会では50万人以上もの人が台北に集まって協定締結に意義を唱えたと言う。今も続くこの反対運動は、Sunflower Movementと呼ばれている。
Offshoreでは、この裏側で起こっていたメディアムーヴメントとも呼べる、インターネットと広告を駆使した活動展開が非常に興味深いものなので紹介する。今回はfacebookのテキストチャットで、Sunflower Movementにおいて重要な役目を果たした台湾の奇才グラフィックデザイナー、アーロン・ニエこと聶永真と会話をしてみた。


聶永真(Nieh Yung-Chen / アーロン・ニエ)とは…

台湾で活動するグラフィックデザイナー。Offshoreでは過去に彼の作品をいくつか取り上げている。北京の写真家223による写真集『No.223』ではアートディレクション、ブックデザインを担当。また、台湾で発行されるビッグイシュー『THE BIG ISSUE TAIWAN』の表紙デザインも毎号手がける。その他、台湾のエッセイや小説など書籍デザイン、ポップシンガーYOGA LINの音楽CDジャケットを独自の発想でデザインし、台湾のみならず中華圏ではデザイナー、アーティスト志望の学生よりカリスマ的な人気を得ている。印刷の特性や紙質をうまく活かし、規格サイズや既成概念を越えた作品は、手にした者のその物体に対する思い入れをさらに深くする。台湾唯一のAGIメンバー。2013年に大阪で、2014年に香港で開催されたアジアのグラフィックデザイナーを集めた展示・イベント『type trip』に台湾代表として登壇、代表作品を展示。



まず、3月末に現れたこのwebサイトのデザインの美しさに驚いた。今まで見てきた世界の反対運動のwebサイトとはまったく違う、シンプルで目を引くデザイン。台湾のSunflower Movementについて記録が連ねられているwebサイトだ。





webサイトのクレジットを見ると、Special Thanksの項にAaron Nieh(聶永真)の名もある。確かにアーロンのデザインの特色に近いものがあるが、少し違う気もする。本人に直接聞いてみた。これ、アーロンのデザインなの?

※以下、聶永真(Aaron Nieh / Nieh Yung-Chen)の名前は「アーロン」で表記する。そして、引用青字部分はアーロンからの返答である。

4am.twのデザインは僕じゃなくて、ボランティアの別のデザインチームがやってるよ。でも、4am.twのベースとなる黒一色のデザインは、僕がデザインしたNEW YORK TIMES(以下、NYT)の広告を元にしてる。僕はNYTの紙面広告をデザインした時から、3月18日から始まったこの運動に関わってるんだ。


そういえば。私のfacebookタイムラインでは、NYTに紙面一面を使った広告が出たことが話題だった。NYTの一面に、台湾で何が起こっているのかを伝える、この広告が掲載される。



そして、広告を使ったSunflower Movementと言えばこちらも私は非常に気になっていた。この広告には『4am.tw』のロゴがあるので、4am.twが自由時報に出した広告らしいのだ。


自由時報の広告に関するアーロンのコメント。


この新聞広告は、Sunflower Movementが国会占拠をいったん終了することに向けて、(4月10日で国会を立ち退くことを宣言してる)盛り立てる、そして知らせる為の広告だね。この広告では、みんなにこう伝えたかった。この日々で、もう台湾の人たちはそれぞれが新しいメディアになった。何が今起こっているのか、既存のメディアよりも速く、正確に、人に伝達することができてる。これを見た人は、動きが遅くてもう信用できなくなってしまった政府や既存メディアに対抗して、自由に自分が発信するヘッドラインを書くことができる。これのキャッチコピーはこう書いてあるんだ。『18時にあの場所で会おう』。4月10日の18時に集会をやるよ、っていうことのお知らせでもあるんだよ。


それから、翌日の4月11日、僕たちは3つの台湾の新聞に、Sunflower Movementは国会占拠を終えたことを宣言する広告を作ったんだ。







さて、広告、広告、と紹介してきたが、広告とはスポンサーがお金を払って新聞やテレビ、メディアのスペースを買い取り、伝えたいメッセージを伝える場所だ。金さえあれば誰でも広告は打てる。しかし、誰がお金を払っているのか。


すべての広告展開において、僕たちは本当にただのボランティア。4am.twは、一時的なチームで、自分たちがサポートできることをやっているだけにすぎないんだ。

メディアに広告を出すためのお金、これは3621人の人たちが寄付してくれたもの。僕はデザイナーとしてこのチームを支えて参加してるけど、このチームには他にはプランナーや、コピーライターや広報担当者がいる。実は、Sunflower Movementが起こる前は、僕たちはお互い知らない人同士だったんだ。

なんとなく、突如現れたあの美しいサイトの中身が解けてきた。

「3621人の人たち、って、それは団体名か何か?それとも、本当に3621人の人数、ってこと?」と聞いてみる。

3621っていう数字は単に人の人数だよ。この運動が起こってから、PTT(台湾ですごく有名な掲示板サイト)でこの運動についてたくさん話し合われたんだ。ある日、誰かが「ドネーションを募ってApple DailyとかNYTに広告を出して、今台湾で人は何に立ち向かってるのか、何が起こってるか、を知らせるってのはどう?」って書いた。それでそのPTTの掲示板で話していた人たちは、flying V(台湾のクラウドファンディングサイト)にプロジェクトを立ち上げてドネーションを募ったんだ。すると半日で3621人の人が賛同して寄付してくれた。200,000米ドルを上回る金額を。それでApple DalyとNYTの広告枠を買うことができたんだ。(一瞬の展開だった)

そして、さらにたくさんのボランティアが(僕を含めて)集まって、それぞれの専門分野でこの動きを手助けしたんだ。僕たちはNYTの広告にタイトルとして“democracy at 4am”と付けた。それで、僕たちはこのチームをシンプルに“4am”と呼ぶけど、ある人は“4amチーム”と呼んだり“3621チーム”と呼んだりしてる。こんな流れだよ。


日本で言い換えれば、

・デモ運動が起きて
・2ちゃんねるで話し合った人たちが
・「そうだ、広告を大きいメディアに掲載しよう!」と盛り上がり、
・クラウドファンディングサイトCAMPFIREで資金を集め
・海外メディアと国内メディアの広告枠を買い取り
・運動を支持する国内のデザイナーが紙面広告をデザイン

という流れになるだろうか。

ちなみに、この3621人の人たちが出し合った金額は正確には633万台湾ドル(日本円にして約2,130万円※4/14現在)にものぼるらしい。NYTインターナショナル版では3月29日と3月30日にカラー印刷にて掲載され、NYT US版では3月31日にモノクロで掲載された。
NYTで掲載されたアーロンデザインの広告はJPEG画像として4am.twよりダウンロードできる。
右リンクのDownloadを参照。http://4am.tw/we-need-your-support/

4am.tw、並びにアーロンが当初デザインしたNYT向けの広告には、

Morning without YOU is a dwindled dawn.
というキャッチフレーズが印象的にレイアウトされている。
Emily Dickinsonの詩を引用。実にアーロンらしい、叙情的表現だ。
そして4am.twのTimelineページの最後は「A New Day Will Come…」で未来への希望を含ませる。

アーロンのみならず、他にも台湾在住アーティストによる興味深いSunflower Movementへの関わり方が見受けられる。


先に紹介したflying Vとはまた別の台湾クラウドファンディングサイトでは、このSunflower Movementを記録した写真家による写真集を出版する為のファンディングがローンチされている。(※4/3にスタートし、500部印刷で13万台湾ドルを達成目標に設定されていたが、4/14現在、約321万台湾ドルの資金が集まって2472%の達成率となり、5000部の印刷が決定している。)


滅火器という台湾のロックバンドがSunflower Movementに向けて楽曲を制作しそれがテーマソングになったことは、今の台湾の情報を追う人なら既に知っているかと思うが、


このミュージックビデオを制作したクリエイターたちが今週水曜、MoNTUE美術館(北師美術館 http://montue.ntue.edu.tw)で、この映像をどのようにして制作したのかレクチャーする。そしてこの映像のディレクターは、台北で毎月定例で行なわれるサウンドアートのパフォーマンスイベント『Lacking Sound Festival(失聲祭)』に何度も出演している女性テクノトラックメイカーでメディアアーティストのBetty Appleだ。



今回は、あくまでも現地カルチャーを伝えるOffshoreとして、メディアとアーティスト、クリエイターの動きを紹介するだけに留めた。Sunflower Movementの流れを見ていたうえで実際にアーロンに直接話を聞くと、デザインや文化、芸術が非常に豊かな台湾の人たちの柔軟な発想にまた唸らされた。






深く壮絶な歴史のある台湾、中国、日本、そして近隣諸国。このSunflower Movementについて伝える記事はたくさんある。ここにいくつか参考リンクを紹介しておく。


VICE NEWS:The 'Sunflower Movement' Gathers Support and Momentum in Taiwan


VICE News:The Sunflower Revolt: Protests in Taiwan



英ガーディアン:Taiwan protesters invade cabinet offices as tension over China pact escalates


BUZZ FEED:Taiwanese Students Storm Parliament To Protest Illegal China Trade Agreement


ニコニコ大百科:ほえほえくまー

※タイトルで気が抜けるが、発端のサービス貿易協定に関して詳細に記してある。

レイバーネット:台湾:サービス貿易協定に反対し国会占拠つづく