【trip report】台北3日間レポートday1 - ノイズとテクノのパーティー「UNCOVER」へ

2014.9.6 sat UNCOVER会場

2012年8月、3週間ほど滞在していた台北。もうすっかりこの街と人に馴染んでしまった気でいたが、それからほどなくして起こった師大路のライブハウス「地下社會(UNDERWORLD)」の閉店、師大路周辺の環境の問題、まだまだ記憶に新しいひまわり学生運動、と、私にとって大きな動きがいくつもあり、自分と台北の距離を感じていたここ数ヶ月間だった。


Offshore: 台湾の友人に聞いてみた「師大路ってどうなの?」アンケート
http://www.offshore-mcc.net/2013/07/blog-post.html(地下社會についても触れる部分がある)
Offshore: 広告とネットとデザインを味方につける-台湾メディアムーヴメント
http://www.offshore-mcc.net/2014/04/media-movement-in-taiwan.html

相変わらず中国語も話せないし、もうあそこは何もかもが変わっているんじゃないかと不安になりながらチケットを手配したのが出発の3日前ほど。到着して歩き慣れた中山を歩くと、変わらない台北と変わった台北を同じ数ずつ見つけることができた。台北MRT駅から1駅、中山駅出入り口階段の壁全面に不動産広告が大きく貼られていた。台北MRTの広告で私の中で一番印象深かったものは、猫空ゴンドラののんびりとした広告だった。呑気だった。不動産、痩身エステにジム、そういった広告が2年前と比べると増えたような印象。香港や上海の地下鉄ではこういったジャンルの広告が本当に多いのだが、台北MRTも少しずつ、香港や上海に似ていくのかもしれない。そういえば、MRTの路線は、2本ほど増えていた。

いつもの蒸餃子屋や食堂は相変わらずの活気で営業中。新たな家族を1人迎えた台北のショップ&カフェ「61note」も、良い雑貨を広めようと奔走していらっしゃるようで、話を聞くとこちらの身が引き締まる。

何年も工事中だった道路がやっと完成していた。


それにしても、何かと生活用品までセンスの良い台湾は健在。郵便受けからちょっとした店看板、窓と窓枠の塗装。それぞれの建物の形の違い、窓の柵の違い、部屋の主がベランダに植える植物の違い。ありとあらゆる目に入るものは、画一化されていないからこそ生き生きして見える。

大阪のとあるデザイナーさんが「ここ気になってるんです」と言っていたので行ってきた、最近話題らしい『小器』。食堂は並んでおり混雑。陶器をメインに販売するショップのほうをじっくり見る。ほとんどの陶器が日本の作家のものだけれど、一番奥にひっそりと置かれた、台湾のデザインラボによる製品が、やはり私の気を引いた。

台湾に到着したその日に開催されたUNCOVER。これをどうしても自分の目で見たくて、この日に台湾に来た。
台中在住のニュージーランド出身Hanson兄弟はアート批評誌White Fungusやアヴァンギャルド音楽誌The Subconscious Restaurantの発行者であり、昨今はイベントも多数企画開催。そしてOffshoreでもかつてインタビューを掲載したアンダーグラウンドテクノパーティーのオーガナイザーSMOKE MACHINE。この両者が企画したUNCOVER。
出演したのは、これまたOffshoreで第一号のインタビューを取らせてもらった台北在住サウンド・メディアアーティストYAO, Chung-Hunと、YEH Ting-HaoによるヴィジュアルテクノデュオHH。台湾アヴァンギャルド音楽レーベルKandala Records主宰のYou-Sheng Zhangはソロ名義Sovietronicとして出演。そして台北の失聲祭にも何度も登場していた、台湾ノイズのWANG Fujuiも。

会場は驚くべきこのロケーション。最寄りのMRT後山埤駅から歩いて20分ぐらいで到着。元々はお寺だったようだが、現在は使われなくなり、現地在住のフランス人が買い取って、たまにイベント等を開催しているらしい。

このイベントUNCOVERは、The Subconscious Restaurant2の発行記念イベントでもあり、入場者にはThe Subconscious Restaurant2がプレゼントされる。帰りの飛行機で一気に読み進めたこの新刊は、非常に面白い。Kandala Recordsから多数音源をリリースして来た台湾のカルト的人気を誇るDawang Yingfan Huangについて北京のノイズ音楽家Yan Junが語るエッセイや、同じく台湾で鮮烈なパフォーマンスが話題を呼んでいるBetty Appleについてのコラム、さらにはVatican ShadowことDominick Fernowに関するコラムまで。香港出身のアーティストLee Kitへのインタビューも興味深く、インダストリアル、アヴァンギャルド、社会におけるノイズ事象(これらは音楽ジャンルだけを指しているわけではない)が気になる人は読んで勇気づけられるはずだ。

The Subconscious Restaurant 2

イベントのクライマックスあたりには、おそらく150名程度の人が会場にいたので、延べ200人以上は来ていたのだろうか。いつもいつも台湾で希望を感じる要素のひとつが、客層が固定されていないということ。明らかにヒッピー文化に傾倒しているような人もいれば、アカデミックな空気を醸し出している人もいるし、40代ぐらいと見られる人たちに、さらには高校生まで来ていたということ。


YAO, Chung-HanとYEH, Ting Haoによるデュオ、HH。


HHによるこの日のパフォーマンスを録音したMIXCLOUD


私のように外国から来ていた人間が他にもいたようで、イベント終盤、主催チームの一人、Ron Hansonと話をすると、「今日は北京からも香港からも、日本からも見に来ていてくれた人がいて、さらにSmoke Machineと組んでオーガナイズしたから、いつものイベントのお客さんだけじゃなくて広がりができた。いろんな人がこの1つの場所に集まって最高だ。」と嬉しそうに言っていた。



音響の面で少しトラブルもあったようだったが、この異様で奇妙な環境で体験するイベントは非常に楽しめた。確かにオーディエンスも様々なタイプの人が、それぞれが自由に楽しんでいたし、居心地の良いイベントだった。ライブを遠くから眺めて誰かと話したり、逆に近くで見て音を間近に体感したり、いっそのこと、ライブを見ずに遠くから聴こえる音を聴きながら、誰かとおしゃべりを楽しんでいても良い。


1日目の最後は、友人と会い、最後に台湾のチェーン書店、誠品敦化店に寄る。雑誌コーナーの入り口、面出しして置かれた本「NOT TODAY」が目に飛び込む。waterfallが発行する別の雑誌だ。台北の友人たちは、マイペースに今も頑張っているし、誠品は大手書店にも関わらず、売れ行きや作家の知名度に関わらず、ローカルでインディペンデントに活動する人を応援している。

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