バンコクでノイズ音楽は鳴っている?オーガナイザー兼音楽家イップへのQ&A

Chamber of Tapeworms / taken by Riar Rizaldi

北京でノイズやフリージャズの演奏を堪能した私はバンコクに辿り着き、ここでも地下深いノイズやエクストリームな音楽を発掘しようと思っていたのだが、とにかく見当たらない。いろんな知人友人に「ノイズやフリージャズやインプロやアヴァンギャルド、そんなジャンルに当たるようなことをやっているバンコク在住の音楽家はいないのか?」と聞き込みをした結果、辿り着いたのは1人のドラマーだった。バンコクのグラインドコアバンドSmallpox Allomaのドラマーであり、ソロやデュオ編成でノイズも演奏するというイップ。シラパコン大学でファインアートを学ぶ彼と会い、バンコクでのノイズやエクストリームな音楽の現状を聞いてみた。

フィードバックやコンタクトマイクを使用するスタイルで演奏し、現在は自身のオーガナイズプロジェクト『Cacophonous』、ソロ名義『๛ komootra』、インタビュー内に登場するメンとのユニット『Chamber of Tapeworms』などで活動中。


Chamber of Tapeworms


──今何歳?

25歳です。老けて見られますけど。

──Torturing Nurseをいつかタイに呼びたいって、facebookに書いてましたよね?中国とタイのノイズシーンは繋がっていないと思っていたので、びっくりしました。タイでTorturing Nurse知ってる人なんてタイ人でイップしかいないんじゃないかなと思います。

4年前ぐらいでしょうか。確かmyspaceで見つけました。今はインターネットで簡単にお互いのことを知ることができるようになっていると思います。まず最初に、僕はノイズが好きなので、いろんなノイズ音楽を探していて、でも、どうやってTorturing Nurseに辿り着いたのかは覚えてないですね。そして彼らのアートワークが特に好きです。クリエイティブで。Torturing Nurseを見つけたときはハーシュノイズにはまっているとできしたね。

※Torturing Nurse……上海を拠点に活動するハーシュノイズユニット。2014年はニューキャッスルで開催されるTUSK Festivalなどに出演。2012年にズビグニエフ・カルコフスキー氏のオーガナイズする日本ツアーで、中国・香港各地のノイズ音楽家らとともに来日。
https://www.facebook.com/torturingnurseforever


──ノイズ音楽に目覚めたのはいつ?

僕が留学でニュージーランドに住んでるときだったと思います。ノイズを聴き始める前はグラインドコアやデスメタルばかり聴いてたんです。そんなときに、1人、ノイズとか変な音楽を聴いてる友達に出会って。

──ニュージーランドで?

いや、僕はニュージーランドにいましたが、彼はアメリカ人でアメリカ在住です。インターネット上で知り合いました。彼はグラインドコアのバンドをやっていて、そのバンドが大好きだったんです。その彼が、だんだんノイズや実験的な音楽を演奏するソロプロジェクトを始めるようになって。それを聴いたときに、この、一般的な楽曲としての構成がなされていない音楽ってなんなんだろう?と思って。グラインドコアは、ビートとか、ストラクチュアがありますよね。でも彼の音楽には、そのルールみたいなものがなかった。最初は全然好きじゃなかったんです。この変な音楽はなんなんだ、と。音楽じゃないじゃないかと。

──メロディもないし、退屈だったりするかもしれませんよね。

そう、これなら誰でも出来るんじゃないか?とか思った。でもそれを聴いてたら、いつのまにか好きになってたんです。どこかにポイントがあったんですよね、好きになってしまったポイントが。それから、この一般的な楽曲構成がなされていなくて、即興性に富んでいる、いわゆるノイズ音楽の虜になりました。これは素晴らしいし、芸術的だと。

──それは何年前ぐらいのこと?

4年ぐらい前です。

──それで、ニュージーランドから2年前にタイに帰ってきたんですよね。帰ってきたバンコクで、ノイズ音楽好きな友達は見つけた?

1人、大事な友達を見つけました。メンという友達で、彼は僕よりもっとノイズの世界にはまっています。今UKで勉強して修士課程を取ろうとしています。彼は本当にクレイジー。

左:メン、右:イップ。

──メンは何歳?

23歳ですね。インターネット上の掲示板で知り合いました。他にも何人か、同じ方法で知り合った子がいますね。でも特にメンに関しては、僕と考えも共通しているので、一番信頼しています。彼は来年タイに帰ってくる予定なんですが、彼がUKに行く前には一緒にイベントを企画したりしていました。

──そもそも、ノイズなど変わった音楽を聴くオーディエンスはタイに存在するんでしょうか?

大きなメタルやグラインドコアのシーンはあります。たくさんの人がメタルを聴いていますね。でも、ノイズは、どうでしょうね。僕がノイズのライブをやるとき、オーディエンスは外国人が多い。

──なんで?

わかりませんね。バンコクのタイ人に向けての自分の発信が足りないというのもあると思いますし。あと、「僕の音源聴いて下さい!」って、誰にでも言えるような音楽でもない。こういう音楽が好きな人は自分でなんとか探し出すしかないわけで……。それでも、自分の周りで10人ぐらいはバンコク在住でノイズ聴いてる人を思いつきますけどね。

──その10人は、どうやってノイズと出会ったんだろう?

僕と一緒だと思います。

──インターネットとか。

あと、僕はグラインドコアのバンドもやっているし、メタル・グラインドコアのシーンと、ノイズのシーン、両方に属していると思います。僕は特殊です。それぞれのシーンは交わってはいませんね。あとは、バンコクのレーベルSO::ON Dry Flowerのボス、清水宏一さんもノイズに詳しい人ですよね。

──先日、日本から来たAstroなどのバンコクライブを、SO::ON Dry Flowerと企画したんですよね。どうでした?

素晴らしい音でした。オーディエンスはタイ人よりも海外の人のほうが多かったですね。

──タイのオーディエンスはだいたい何歳ぐらいでした?

たぶん僕と同じ世代だと思います。一部には友達もいるけど、全然知らない人もいました。外国人オーディエンスも若かった。若い年代が多かったですね。

──これからも、海外ミュージシャンがバンコクに来るなら、オーガナイズしますか?

もちろん、タイミングが合えばやりたいです。今僕は大学の課程に忙しいのですが、今後時間が取れればやります。あと、今UKに行っているメンが帰ってきたら一緒に企画したいですね。自分だけで企画すると、大変なので。彼は来年帰ってきますから、そうしたら必ず。

──タイって、ライブハウスのような機材常設で防音されてるライブハウスがなかなかないのが大変ですよね。機材も全部レンタルしないといけないし。

Harmonicaがあったときはノイズのライブもやりやすかったんです。オーナーもノイズ音楽に理解があって。でも閉店してしまいました。

※Harmonica……2011年夏にオープン、2014年7月に閉店したライブハウス。キャパシティは少ないが、世界から様々なバンドが演奏に訪れた。
https://www.facebook.com/HarmonicaBkk

──今はノイズ音楽をやれるハコはない?

大音量を出させてくれる場所がないですね。ZOOというベニューもあるのですが、ノイズ音楽のライブができなくなっちゃいました。近隣からの苦情が原因だそうです。

──タイにノイズのシーンがあるのかどうか、ずっと探してたんですけど、かなり難しそうですね。

かなり小さいシーンです。友達同士のコミュニティぐらいの。

──マレーシアなど、近隣の国と比べるとどうでしょう?

近隣国のことは僕は知らないですね。でも僕のグラインドコアのバンドSmallpox Allomaではベトナムに行ったことはあります。ベトナムのメタルシーンは10年以上前から活発で、メタルって言っても、いろんなタイプの音楽が同じコンサートで演奏したり、柔軟なシーンがあります。

──タイでこれからノイズなどの音楽は増えると思いますか?

そうなるように、自主企画を頑張ろうと思ってます!ただ、一番の厳しさは、やっぱり資金と環境ですね。今でも、本当に数人ですが、とても面白い人がいます。Kijjazという音楽家は、ピュアなノイズではないですが、実験的な音楽を演奏します。一方で、バンドではいわゆる普通のロックを演奏しています。そういう、バンドとまったく違ったことをソロプロジェクトでやるミュージシャンは、タイにいくらかいますね。そういうミュージシャンが、一時的にハーシュノイズをやることもあったり。あと、gamnad737のファースト。この人は面白いですよ。かなり狂ってる。うん、この人が一番もしかしたら面白いことやっていておすすめできるかもしれません。事故で足を切ったときに流れてきた血をCDのジャケットにプリントしたりとか、もう発想が狂ってる。でも普段はすごく大人しくて、すごく良い人です。本当に。そういえば、以前、harmonicaでライブ中に彼は拡声器使って叫んで歩き回ってて、彼はもう昇天してしまって、そのまま外に出た。前も見ずに道を徘徊して、車に轢かれる一歩寸前だったそうです。

──凄い……。この先、またオーガナイズをする予定は?

メンが帰ってきたらやりたいですね。前回の、Astro等に出演して頂いたイベントはCacophonous#6でした。彼が帰って来たらCacophonous#7を開催する予定です。あと、僕はバンドのほうではObscene Extreme Asiaという、日本で開催されるグラインドコアのフェスにいつか参加したいと思っています。バンドもノイズも、両方続けていきたいです。

SO::ON Dry FlowerとCacophonousでの共同企画の際に作られたフライヤーはイップが製作。
Polwach Beokhaimook. Cacophonous #6 Flyer, 29.7 x 21 cm, spraying glue, toilet papers, poster, acrylic, and paper pieces on paper. Post-processed with Microsoft Office Picture Manager and Photoshop.


上記Cacophonous#6でのAstroのライブ

──ちなみに、今大学でファインアートを学んでいるとのことですが、大学を卒業したら、何をしたいですか?

キュレーターになりたいです。

──ノイズ音楽はアートの中にあるものだと思いますか?

アートの一部だと思いますが、一部は交わるし、一部は交わらないと思います。

──キュレーターになったら、どんなキュレーションイベントを行いたいですか?

例えば、ネガティブアートのようなものも取り込む場も、作りたいですね。ネガティブアートは、生きるという行為を反映しているから。でも僕は全然普通の人間なので、血は血だし、死体を見たらビビります(笑)。