北京と東京の音楽家が邂逅する:MIJI Festival+Multiple Tapレポート

MIJI+Multiple Tap2日間が終了した際、
出演者全員に向けて会場から大きな拍手と歓声が送られた。

北京の音楽家Yan Junが毎年開催するMIJI Festivalは、毎年あらゆる世界の実験・即興音楽、ノイズ等を演奏する音楽家が招待され、北京の音楽家とともに演奏する。今回開催されたMIJIは『密集音乐交流活动 Miji Festival + Multipal Tap Festival』と題して、日本拠点の音楽家によるフェスティバル形式のプロジェクトMultiple Tapと共同開催された。日本の音楽家たちの演奏は北京でどのように受け止められたのか。現地でのショートインタビューを紡ぎ合わせてレポートする。

今回のショウケースは清明節で3連休のあいだ、2日間に渡り開催された。予約人数は両日とも70名を越え、最終的には初日約110名、2日目約100名が入場。日本からのメンバーは、Multiple Tap主宰の康勝栄、秋山徹次、石川高、JOJO広重、JUNKO、中村としまるが参加。北京からのミュージシャンは20代中盤~30代前半の若い音楽家たち。地元の音楽家が若いこともあってか、客層も、日本の同じような音楽ライブの会場にくらべるとぐんと若く、女性と男性の比率が同じだったことにも驚いた。また、上海や香港、他の中国の都市からこの日のために北京にやってきた観客も多かったそうだ。
密集音乐交流活动 Miji Festival + Multipal Tap Festival
|DAY1 4月4日(土)
JUNKO+刘心宇 Liu Xinyu
中村としまる
康勝栄
JOJO広重
石川高 + 秋山徹次 + 蒙古即兴委员会 Mongolian Impro Committee[闫玉龙 Yan Yulong ・刘心宇 Liu Xinyu ・VAVABOND・Soviet Pop(李青 Li Qing ・李维斯 Li Weisi)]
|DAY2 4月5日(日)
康勝栄 + VAVABOND
秋山徹次
JUNKO
中村としまる + Soviet Pop(李青 Li Qing ・李维斯 Li Weisi)
石川高
JOJO広重 + 余益裔 Yu Yiyi

今回の2日間のイベントを企画し運営したのは、Offshoreでも以前にインタビューを掲載した北京の音楽家Yan Jun、そして彼と協働している北京拠点の若い音楽家たち。まずは彼らの紹介を交えながらショートインタビューを掲載する。

VAVABOND
※北京在住、女性音楽家。ラップトップを用いて即興で演奏する。2014年にリリースされたシンガポールThe Observatoryのremixアルバムにも参加。
──日本の音楽家と一緒に演奏してどうだった?
私は康勝栄さんと演奏しましたが、演奏の打ち合わせは何もしませんでした。何も話さなかったことによって、お互い新鮮に演奏できて良かったと思います。
──オーディエンスとして2日間見ていた感想は?
2日目最後のJOJO広重さん、すごく良かったです。もっとボリュームが欲しかったぐらい。
──北京のノイズ、インプロシーンについて何か思うことはありますか?
北京のシーンのミュージシャンは若い。これは良い事だと思います。Yan Junたちの世代から、90年代生まれの世代に移り変わってきて。私も今31歳で、まだこれからなので。



Soviet Pop
※Li Qing(32歳)とLi Weisi(33歳)によるデュオ。Yan Junのレーベル「SUBJAM」からもリリースしている。
──Qingはモジュラーシンセ演奏してるんだよね?Weisiは?
Weisi:テープレコーダーと、コンデンサーマイクを使ったり。
──いつも2人でデュオで演奏してるの?
Weisi:たまにソロもやりますね。
──こういった音楽をよく聴いてますか?
Weisi:ノイズをよく聴いているというわけではないですね。
Qing:私たちはシュトックハウゼンとかをよく聴きますね。ノイズに関しては、代表的なものしか聴いていないです。
──今回は日本と北京の音楽家が演奏しましたけど、違いみたいなもの、感じました?
Qing:一番の違いは、私たちは新しいということじゃないですかね。それと、日本の音楽は、何に関しても、どんなジャンルでも、日本の個性があると思います。
──中国のこういった音楽家たちに中国らしい個性は感じますか?
Qing:今は感じられないですね。
Weisi:私たちはまだ模索している途中かもしれません。
──目標は?
Qing:音楽に対して意欲的でありたい、っていうことですね。何か新しいものを築きたいと思っています。数年後には、中国のこういう音楽が個性的に受け取ってもらえればいいなと思います。


Yan Yulong
※バイオリンを演奏。26歳。2014年10月には北京で坂田明氏と共演。
──私は以前、北京で坂田明さんたちと演奏していたあなたを見たんですが、昨日は北京の演奏家数名、秋山徹次さん、石川高さんと演奏してましたよね。どうでしたか?
面白かったです。楽しめました。
──この2日間で、一番気に入った演奏は?
2日目、アコースティック楽器を使った演奏、秋山さんと石川高さんですね。
──日本の音楽家と北京の音楽家、何か違いは感じましたか?
日本のミュージシャンは自信を持って演奏してますよね。中国の演奏家は、ちょっと遠慮気味かもしれません。シャイと言うか。
──なるほど。あなたはどう?シャイ?
いえ、私はシャイじゃないですよ。(笑)


1日目の最後のセッション、石川高+秋山徹次+Mongolian Impro Committee。
左:Yan Yulong 右:秋山徹次




Yu Yiyi
※広州出身の音楽家。2日目の最後の演奏で、JOJO広重氏とデュオ演奏。広州で仕事を失い、今回北京に来て、その後北京に住むことに決めた、とのこと。
──JOJO広重さんと一緒に演奏してどうでしたか?
大学時代からこういう日本のノイズを聴き始めて、非常階段は私の大好きなバンドのひとつです。美川さんに会えなかったのは残念ですが、JOJOさんと一緒に演奏できて光栄でした。
──今回のMIJI+Multiple Tap、全部のライブを見てどうでしたか?
うそいつわりなく、すべて素晴らしかったです。特に中村としまるさんのノーインプットミキサー、あの演奏は大好きになりました。

朱文博 Chu Wenbo
※燥眠夜(zoomin night)というイベントを北京で定期的に開催するオーガナイザー。今回は物販や音楽家の送迎など、Yan Junと共に制作・運営を行なった。自身も電子音楽演奏家である。
http://site.douban.com/zoominnight/
──今回のイベントの運営はどうでしたか?疲れたんじゃないですか?
ぜんぜん。いつもやってることなので大丈夫です。お金数えて、物販売って、いろいろ手配して。僕にとっては難しい仕事じゃないです。
──ライブはちゃんと見れた?
はい、ライブ中は物販を閉めていたので、見れました。面白かったです!康勝栄さんの演奏は僕にとって驚きでしたね。彼に関しては何も情報を知らなかったんですが、パフォーマンスを見ると、何がどうなって音がなってるのかまったくわからなかった。


颜峻 Yan Jun
※MIJI FESTIVAL主催者でSUBJAMレーベル主宰。自身も音楽家であり、作家、朗読家、ライターとしても活動している。現在42歳。今回は演奏せず、オーガナイズに専念。
──今回はYan Junにとって久々となる、大きな規模の企画でしたよね?
2年前のMIJIも大きかったんですが、その時は確か初日100人、2日目60人。今回のほうが良いかもしれない。
──以前より動員が良かったと。
動員だけじゃないです。オーディエンスの雰囲気が良かった。よりオーディエンスが積極的で。音楽家と観客が一緒にこのイベントの良い空気を作ったと思います。
──中国と日本の音楽家のパフォーマンスの違いってなんだと思いますか?
難しいですね。たぶん年齢かな。今回の中国のミュージシャンはだいたい30歳以下。一番若い音楽家は、Liu XinYuが25歳。彼らはこういう日本の40~50代ぐらいのミュージシャンから影響を受けてきた。それが今は、同じ土俵で一緒に演奏できるようになってるから、彼らにとって本当に良かったと思う。違いがあるかどうかというのは難しいです。日本の音楽もいつも変化しているので。そして何が起こるか、瞬間によって変わるものですから。
──今回のブッキングについて。どういう基準で中国の音楽家を選んだの?
北京では即興や実験的な音楽を演奏する音楽家が多くないので、必然的にこのメンバーになってくる、ということもあります。でもまずは、北京の若手であること、そして音楽を愛する人たちに出て欲しかった。みんな音楽の話を自分からよく話す訳じゃないけど、常に研究していて、いかに実験的なことをやるか、いつも考えて挑戦している人たち。それが一番大事なことですね。私の世代の音楽家はもう年をとってきたし、違うステップにいってる。なので、私は今彼らと一緒に協働することが楽しいです。


会場の北京时差空间(Meridian Space)入り口

1日目、2日目とも、Yan Jun、会場Meridian SpaceオーナーのDorian、Multiple Tap主宰の康勝栄の挨拶からスタートする。両日とも、椅子席はすべて埋まり、立ち見の観客も大勢いた。物販には早くから人だかりができて、特に非常階段関連のCDやTシャツはほぼ完売となったそう。Multiple Tap中国ツアーでは北京のみの参加となったJOJO広重氏にも話を聞いてみた。



アートスペースである会場がライブハウスと化した、2日目最後のセッション、JOJO広重+Yu Yiyi

JOJO広重:北京で初めてのMultiple Tapとしては大成功だったんじゃないですか。2日間で200人以上もの人が来てくれて。お客さんがすごく真面目に熱心に聞いてくれてるのがよくわかりました。日本の音楽を紹介するショウケースという意味では、すごく良かったと思います。
──北京と日本のお客さんの反応の違いなどは感じられましたか?
JOJO広重:情報量の差もあるので比較できませんが、真面目に、熱心に聴いてくれているのは伝わってきました。日本では「いつでも見れる」ということがあるかもしれません。日本でも、地方に行くと今回の北京と似た感じで、普段なかなか見れないので熱心に聴いて下さってる方が多いです。あと、非常階段のTシャツを着て来てくれたりとか、「僕も音楽やってます」って言ってくれたりとか、僕らからの影響を受けてくれてるのはよくわかりました。広がってるということがわかって良かったですね。
──最後、ダイブまであって、すごかったですね。
JOJO広重:
一番最後だったので、盛り上げた方がいいかなと思って(笑)。あと一緒に演奏したYu YiYi君は、僕ら非常階段のファンのようで、一緒に演奏できることがうれしいということ、あと、一緒にやるからには全力で、という意思が伝わってきました。なので、軽くジャブを打っておこうかなと(笑)。喜んでくれたみたいで良かったです。
──次は非常階段・初音階段として香港にも行かれるんですよね?
JOJO広重:
そうですね。北京もまた来たいです。繰り返し来ることによって、また違うお客さんも来てくれるでしょうし、今日のライブに来た人からの口コミが伝わっていけば良いですね。



最後に、Multiple Tap主宰の康勝栄氏に、北京での2日間の感想を聞いてみた。
──今回、Multiple Tapとしては初めてのアジアでの演奏ですか?
康:
初アジア、初中国で。イメージが変わりましたね。僕自身も今までアジアではソウルでしか演奏していないので。
──今までの中国のイメージは、どんなものでしたか?
康:
殺伐とした感じというか、ちょっと人も堅いんじゃないかなと思ってました。こういうものに対して理解してくれないんじゃないかなと。それが、これだけ人が来てくれて、きちんとみんな聴いてくれてて。ヨーロッパのお客さんよりもレスポンスがあって、感触が良かった。
──中国の中でも、北京が一番、即興音楽や実験音楽のシーンが発展していると思います。自身の演奏に関してはどうでしたか?
康:
ちゃんと出来たと思います(笑)。うまくいかないところもあったけど、機材もちゃんと揃ってたし、良かったですね。
──中国でのMultiple Tapツアーのオーガナイズにはどれぐらい時間をかけたんですか?元々、康さんが発案?Yan Junが発案?
康:
僕からですね。僕がYan Junに中国でMultiple Tapをできないか?って言ってみて、Yan Junが「これぐらいの時期にMIJIをやるからMultiple Tapとの共同でやろう」って言ってくれて。1年前から話し始めて、こないだメールを見返したら137通もやり取りしてましたね。
──なんで中国だったんですか?
康:
アジアでやりたいとまず思って、中国は単純に興味がありました。そしてYan Junみたいな人がいる、っていうこと。Yan Junみたいな人が出てくる環境がある中国が気になってましたね。
──今日Yan Junが言っていたのは、中国のミュージシャンは若くてピュアだと。康さんはどう思いますか?
康:
うん、若い。正直うらやましいですよね。音楽家もお客さんも若くて。
──今回参加した日本の音楽家のみなさんも、オーディエンスが若い人が多い、あとオシャレな女性も多い、とおっしゃってました。東京でのMultiple Tap関連のイベントはどういう客層ですか?
康:
こういう感じにはならないですよね。お客さんは、おじさんが多い。いろんな人に来てもらえるようになりたいですね。若い男の子とか特に。今日JOJO広重さんと一緒に演奏したYu Yiyiと、上海からお客さんとして来ていた男の子たちが友達、って聞いたんです。違う都市に住んでいても、同じ趣味、同じ世代で繋がっているのがいいですよね。

MIJI+Multiple Tap2日目、VAVABOND+康勝栄



前回北京に訪れたときも、北京在住の若い音楽家の活動を知り、この都市とそこで暮らす音楽家たちに希望を抱いた。Yan Yulongの演奏や、ライブハウスxpでのChu Wenboによるシリーズイベントが印象的だったのが昨年の10月。それから半年経った今も、彼らは真剣に音楽と向き合いながらさらに面白い現場を作ろうとしている。ならば、また半年後、1年後に北京を訪れると、さらに彼らのシーンは盛り上がりを見せるのかもしれない。今回Multiple Tapとの邂逅が彼らにどのような影響を与え始めるのか。次回北京を訪れる日が非常に楽しみである。

なお、Multiple Tapメンバーはこの後杭州、上海でも演奏する。引き続き、Offshoreにてレポートを掲載する。