mizutamaくんのみやげ話(フィリピン・マニラ編)書き起こしレポート

2月24日、大阪市此花区を拠点に活動するアーティストmizutama氏が約6週間のマニラ滞在を終えて帰国。帰国後まもない2月26日、mizutama氏がアーティスト数名と共同で運営する此花区FIGYAにて、『Mizutamaくんのみやげ話(フィリピン・マニラ編)』というタイトルのトークイベントを開催。Offshore山本佳奈子と、同じくFIGYAの共同運営者であるバグシンセ奏者の中田粥(2人ともマニラへは行ったことがない)が聞き手を務めた。家族での滞在のようすや、マニラで経験したことをざっくばらんに聞くみやげ話の会。この記事は、そのトークイベントの一部を書き起こししたもの。


写真提供:mizutama

facebookイベントページ
https://www.facebook.com/events/250871822028768/



元々定員15名程度の居酒屋だった場所を改装した小さくてアットホームなFIGYAだからこそ、普段のおしゃべりの延長で会話が繰り広げられた。東南アジアでアーティストとして活動する者は、概ね中級家庭以上出身。生活に困らない環境で育った者が多い。しかし最近の日本の状況は正反対と言ってもいいぐらい、アーティストと言えば生活のやりくりに苦しむ人も多いのではないだろうか。アーティストとしての活動と、家庭と、そして生活のための仕事を、どのようにマネジメントしていくのか。mizutamaくんの、無理のない範囲で続けるためのセンスと、それでいながらも挑戦していくことを忘れないバランス感覚に、勇気をもらったトークだった。
山本佳奈子



■各参加者プロフィール

mizutama
1985 年生まれ 岡山県出身 大阪市在住。
10 代の頃から音楽活動を始める。2011 年より大阪此花区の共同アトリエ「此花メヂア」入居。共に展覧会に参加。日常の影響を取り込んではアウトプットする。
何でも無いものの面白さ、格好良さと密に関わり続ける事、ミックスアップした物事をサンプリング的手法を用いて作品制作する。そのスタイルは一見、既成のものに見えて、そのものではない。
[ 主な活動 ]
2011 中崎 透 「 エピソード 」 ( 梅香堂) オープニング即興演奏
2012 re_processor ( 此花メヂア、大阪)
2012 三輪の家 ( 奈良)
2013 squash domain (Gallery Parc、京都)
2013 HANARART 2013 [ アイダカラダ] 展 ( 境町の家、奈良)
2013 mizutama 写真展「 wear は食べない」( 應典院、大阪 )
2014 「 Stolen Names」( 京都芸術センター、京都)
2014 「tokoro 展」ミズタマ 年間 展覧会 ( アートスペースジューソー / #13 )


山本佳奈子(Offshore
アジアの音楽、カルチャー、アートを取材し発信するOffshore主宰。 主に社会と交わる表現や、ノイズ音楽、即興音楽などに焦点をあて、執筆とイベント企画制作を行う。尼崎市出身、那覇市在住。


中田粥
サーキットベンディングの一種「バグシンセ」と呼ばれる電子楽器数台分の剥き出しにされた回路基板を用いてリアルタイムに電子回路をショートさせ演奏を行っている。




滞在のきっかけは、子供

mizutama:お菓子買ってきたんで食べてください。これは天ぷら味スナックなんですけど、パッケージの絵はエビフライ。あと、これはOISHI、えびせんのパクリなんですけど。

山本:アジアでOISHI(オイシイ)っていう単語は有名ですよね。まず、なぜフィリピン・マニラに1ヶ月半滞在する事になったんですか?

mizutama:去年もマニラには行ってたんです。きっかけは、西成にある新・福寿荘っていうスペースです。そこに、アートスペース ジューソー/ #13っていうギャラリーがあるんですけど、そこで1年にわたって展示をやりました。そのときに、フィリピンのアーティストと結婚された平野真弓さんっていう方が来られてました。平野さんは、横浜の黄金町バザールでキュレーターをやっていた方です。旦那さんがフィリピン人でマークさん。マークさんと、2人のお子さんを連れて僕の展示に来られてたんです。その頃、僕もちょうど、もうすぐ子供が産まれるタイミングでした。子供がもうすぐ産まれる話をして、それで、マークさんと同様私もスペースをやっている話もして。それでお近づきになって、「フィリピンにも来てくださいよ」と言ってもらえて。それから交流が始まりました。

山本:子供重要ですね。

mizutama:そうなんです。

山本:今回はマークさんのスペースに滞在したんですか?

mizutama:いえ。前回は10日間ぐらいの滞在だったんで、マークさんの家に泊めてもらってました。長期の場合はいろんなところを紹介できると聞いていて、「日本円で月2万円ぐらいのアパートから、ハイクラスまであるよ」と。今回は頑張ってハイクラスに。

山本:月いくらやったんですか?

mizutama:4万円です。三十数階建てのコンドミニアム。僕らは4階だったんですけど、上まであがるとプールがついてました。子供用プールと、メインのプールと、ジャグジーと。

山本:プールばっかりやん。

mizutama:あとジムと、ビリヤード場と、そんなところでしたね。クバオ(CUBAO)っていう街です。

山本:移動はどうしてたんですか?

mizutama:タクシーか、UBER。でも、UBERに乗っても結構高いから、僕らは電車も乗ったし、ジプニーっていうバスも乗りました。アメリカ軍が置いていったジープがバスになってて。それがすごく安いんです。

山本:乗り合いバスみたいな感じですね。どういう生活してたんですか?毎日のルーチンというか。

mizutama:まず、起きて。

──会場笑

mizutama:まず野菜が食べたいんですね。肉料理が多いんで、サラダをおかあちゃんに作ってもらって。

山本:あ、野菜を買ってきて、部屋でサラダを作ると。

mizutama:それで、今日どこ行くか、っていう話になって電車に乗って遠出してみたり。近所歩いたり。近所歩くことが多かったですね。ローカルなところもハイソなところも、歩いてみたり。タイマッサージしてみたり。

──会場笑

山本:じゃあほんまに普通の生活してたんですね。

mizutama:子育てしてましたね。それで、週に何度かイベントがあって、あそこに行ってみようとか。平野さんたちに誘ってもらったり。現地で出来た友達からメッセージが来て誘われたり。僕らの滞在してたところの直ぐ近くにToday×Futureっていうライブハウスとクラブの中間みたいな場所があって、そこはアーティストの人が飲みに来て溜まり場になってるんです。デックスっていう、割と売れっ子らしい若手のペインターが僕のことを気に入って、良くメールがきて、「Futureに来るでしょ?(共通の日本人の友人の)ヤスも来てるよ」って誘われて、Today×Futureに遊びに行ったり。

Today×Future Facebookページ
https://www.facebook.com/todayxfuture/



山本:私が思ってたのは、98B(マークさんの運営するスペース)で制作してたんかな?と思ってたんですけど。

98B Facebookページ
https://www.facebook.com/98Bcollaboratory/




mizutama:いや、結構ゆったりしてました。

山本:どちらかというとアウトプットよりもインプットのために、サバティカル滞在のような意図もあったんですか?

mizutama:特に決めて行ってなかったんで、最初は制作しようかなとも思ってたんですけどね。制作したりはするんですけど。でも、子供がいると制作って難しいんですよ。最近は集中もできないし。ただ、パフォーマンスはスピード感があるからフィリピン滞在中にパンパン決まったんです。なので、インスタレーションの手前になるようなことは日々つくってました。


アートスペース98Bでのパフォーマンス

山本:どんなことやったんですか?

mizutama:最初は、98Bの5周年イベント。フィリピンのアーティストも出ていて僕も出て、若い世代から大御所まで。でも、向こうの人って、パフォーマンス・アートでは直接的な表現をする人が多くて。

山本:大ぶりと言うような?ザ・パフォーマンス!みたいな感じですか。

mizutama:パフォーマンス!という感じやし、ポリティカルやし。

山本:シンガポールもそうかもしれないですね。パフォーマンス・アートのイベント行ったときに同じような印象でした。というか、パフォーマンス・アートのイベントっていう時点でそもそも大ぶりやから、っていうのもあるんですけど、おお……、って、ちょっと引いちゃう自分にも反省する感覚があって。

mizutama:世界じゅうでパフォーマンス・アートってそういう感じですよね、たぶん。

山本:ポリティカルで直接表現がないと、パフォーマンスっていう手法に出ないのかもしれないです。

mizutama:そうそう。

山本:あ、動画あるんですね。

──98Bで開催されたイベントの動画を視聴中──

mizutama:人がいっぱいいて、ショップもたくさん今はあります。でも去年は何もなかったんですよ。去年はここでグループ展やりました。
そういう活動を続けてると人が来るっていうことがわかったオーナーが、間貸しすることにしたみたいです。

山本:元々広いんですね。

mizutama:でかい。FLOAT4つ分ぐらいです。

山本:でかい。FLOAT4つって、想像つかないですね。

中田粥:FLOAT換算なんだ。

mizutama:FLOATわかる人にはわかりやすい。

FLOAT webサイト(※米子匡司が運営していた大阪市の倉庫を利用したスペース。)
http://float.chochopin.net




山本:大きい会場を小分けにして、スタジオ貸しをしてるってことですね。

mizutama:そうですね。スタジオとして使ってる人もいるし、お店やってる人もいるし。このときは、いろんな場所でパフォーマンスしていいんです。これは僕のパフォーマンスが終わったところの動画ですね。奥に映ってる、ああいうボトルを使ってみたり。日々トライしてました。

山本:音を使ったパフォーマンスをしてたんですね。

mizutama:僕はそうですね。日本でやってるのと変わらない。

山本:私はmizutamaくんの年間の展示見れてないんですけど、リーフレットは見て読みました。mizutamaくんの生活用品の使い方が、フィリピンに行ったらどうなるんやろうなと思ってたんです。東南アジアって、生活用品に色彩とか色がありすぎて、なんか、逆にこういうシンプルな空間に行くと存在自体が浮いたりする。極端にマッチするかしないか、どっちかなんじゃないかな?と思ってました。mizutamaくんにとっても、これまでの自分の視覚とか感覚で捉えてたものが、フィリピンに行ってフィリピンの生活用品を目の前にして、マッチするのかしないのか、どっちかなのかな?と想像したりしてて。

mizutama:それに関して言うと、見てもらったリーフレットの頃とかそれ以前の作品と、今の自分って、別人なんですよ。なぜなら父親だから。視点も違うし、興味も違う。あの頃の、父親になる前のものって、もうつくれなくなったりしてたんです。あの初期の自分の感覚は自分のなかにもうないかもしれない、って思ってました。あと、フィリピンに行ってどこに欲しいものがあるかもわからないし、色彩も違うし。フィリピン・タイムで適当に進むところもあって準備もドタバタしてました。そういう要素があって、自分のなかでは逆にエネルギーが出たんです。久々に面白いものが作れたな、っていう気持ちが実はありました。そう言った意味では、向こうに制作や発表のために行ったよりエネルギーのチャージに行った気がしました。

山本:ちなみにさっきのパフォーマンスはどうやってたんですか?

mizutama:スピーカーから低音が出てて、そこにペットボトルを乗せたら音がブーストするんですよ。そのなかに水を入れるとバイブレーションで水面が波立つ。

山本:光の効果もあると。

mizutama:そうですね。


マニラのアートフェス、パトロンの強さ

山本:他にmizutamaくんのように日常用品を使うようなアーティストっていました?

mizutama:うーん、そうですね。メディアアートっぽいことをやる人や、サウンドアートっぽいことをやっている人はいて。日用品ではなくて、がっつり電子機器使う人たちでしたね。

山本:テクノロジーが全面的に出るというか。

mizutama:でもガチガチではないです。米子匡司さんみたいに電子工作とプログラミングが得意な「音楽家」という感じです。ちょうど滞在中にアートフェアがあったんですけど、サウンドアーティスト系の人のブースが大きく展開されていました。そこで見た作品には、共感を持てました。この展示のキュレーションもテンガルでしたね。僕たちが日頃近くで見ている表現と近い。僕のパフォーマンスを見た人が、「キネティックアート的ですごく興味がある」って言ってくれて。「それは日本のトレンドだろ」って言ってて、その視点は初めて聞いたので興味深かったですね。

山本:ということは、私ぜんぜんマニラとつながりがないので知らなかったんですけど、サウンドアートやってる人結構いるんですね。

mizutama:いますよ。一番有名なのは、キュレーターのテンガルがやってるフェスティバル。そのフェスティバルには梅田哲也さんも参加したことがあるらしいですよ。

山本:マニラでやってるんですか?

mizutama:そうです。来年は呼んでもらえたらいいなあと。「来たらええやんか」って感じやったんで。「どんなことやってんの?」って聞かれて、「こんなことやってるよ」って言ったら「来たらええやん」って。この動画は、アートフェアに向けてアーティストたちが制作してたアトリエ。それもテンガルがキュレーションしてて、案内してくれました。

──動画視聴中──

mizutama:めっちゃ高級な場所です。

山本:これ、ビルの一室を借りてアトリエにしてるんですか?

mizutama:新しくプロジェクトのために事務所がいる、ってなったときに、アートフェアに関わっているお金持ちが「ここ空いてるから使いなさい」って言ってくれたらしいです。映っているのたテンガルさんです。窓の向こう、川が見えるじゃないですか?

山本:はい。

mizutama:来年のフェスティバルは、「船の上でやって川をクルージングしたいねん」って言ってて。どっかで聞いたことあるなあと思いましたね。大阪の人としては。

※参考リンク:梅田哲也『5つの船』
http://5ships-log.tumblr.com




山本:でも、感覚違うんちゃいます?どっちか言うたら、天神祭の屋形船みたいな感じで、高級で、ブルジョワな人たちが来るんちゃいます?

mizutama:でも、ここの川沿いはゲットーエリアなんですね。聞いたんですよ。「音いっぱい出しても大丈夫なん?」って。「大丈夫、盛り上がるよ」って。「日本だと規制があってあんまりできへんねんけど」って言っても、「こっちの人は『良い?』って聞いたら『良いよ』って言ってくれるよ」って。「川でやったら面白いと思わない?」って言ってました。
動画をカメラで撮った、テンガルさんのフェスティバルの紹介動画があるんです。小さいと言いながらも結構大きく見えるんです。

──動画視聴中──


山本:参加アーティストはフィリピンの人が多いんですか?

mizutama:基本はフィリピンで、近くの東南アジアからも招聘されてます。知り合いのシンガポールのアーティストも、出たことあるって言ってましたね。繋がってますよね、東南アジアは。日本の人は少ないですけど。

山本:フェスティバルの名前って覚えてます?

mizutama:それが覚えてないんですよ!

──会場笑

mizutama:なんか、何回も名前が変わってるみたいで、「結局どれなん?」っていう話をしてました。毎回名前変わってるかもしれないです。でも、定期的に10年やってるって言ってました。名前や形は変わりつつも。

山本:やらしいことが気になるんですけど、このフェスティバルはお金はどう工面してるんでしょうか?

mizutama:ジャパン・ファウンデーションです。

山本:でも、ジャパン・ファウンデーションだけじゃないでしょう?この規模は。

mizutama:いや、でもジャパン・ファウンデーションとやってる、という話でしたよ。アーカイブの見せ方とかがうまい気はしましたけど。

山本:なるほど。動画で見るほどに規模が大きいわけではないんですかね?sonarぐらいの規模に見えたんですが。

mizutama:僕もそう思うんですよ。でも、テンガル本人は小さい、って言ってました。ただやっぱり、向こうはお金持ちがいて、場所をタダで貸してくれるパトロンも多い。テンガルは、マニラのサウンドアート系の中心人物なんで、人脈も厚いみたいです。

山本:じゃあこのアトリエに使う高級な一室も、タダと。

mizutama:相当高級だと思われるマンションでした。三十何階にありました。バイヤーの勢いがすごいらしいです。それも良し悪しなんですけど。友達になった人に聞いたんですが、何年か前だとアーティストがアートスペースで売らない作品もつくったりしていたそうです。そういうストイックな態度に衝撃を受けたと。でも、今はギャラリーだろうと美術館だろうとアートスペースだろうと、バイヤーが買い付けに来る。どこにでも来て、何でも買おうとすると。

山本:格差はあろうと、景気好調なんですね。

mizutama:上の人はさらに景気上がってますよね。そこで問題になってるのは、美大卒業したばかりの若い人の作品をバイヤーが買う。そこからバイヤーが転売すると、アーティストにはお金がいかない。転売に転売を続けると、値段がつり上がる。値段がつり上がると、市場としては、そのアーティストの次の作品はつり上がった値段と大差ない値段にしないといけない。となると、今度は売れなくなっちゃって、そのアーティストの息が短くなっちゃう。その問題が気になる、って友達は言ってましたね。

山本:なるほど。

mizutama:それなりに活躍しているアーティスト達はアートだけで食べていて、そんなに贅沢ではなくてもパトロンがついてたり。そこそこの暮らしができている様子でしたね。

山本:パトロンつく、って、今の大阪でないですもんね。

mizutama:絶対ないでしょう。



現地でのパフォーマンス、アート系と音楽系コミュニティ

山本:mizutamaくんの行ったパフォーマンスはどうでしたか?

まず、マークさんの住んでいるアパートの1Fが、マークさんの制作場所なんですけど、そこでオープンアトリエのような感じで一緒にインスタレーションしたんです。マークさんも僕と一緒で、「子育てに忙しくて何も集中できへん」って言ってましたね。だからお互いに、ラフなノリで実験的にやって楽しもうっていう日にしました。

──動画視聴中──




山本:タイトルが「インプロヴィゼーション」?

mizutama:そう、マークさんは「インプロヴィゼーション」っていう言葉に勇気をもらって「やりたい」と。ちなみに、98Bのオリジナルの場所はここだったんです。ここの住所が98Bです。パフォーマンス中、外で飲んでいる人もいて、入れ替わり立ち替わり見に来てくれました。

山本:来ていた人たちは通りすがりではないんですか?

mizutama:友達が多いですね。

山本:マークさんとかから聞いた友達界隈ですか?

mizutama:そう。僕とマークさんがそれぞれ友達にメッセージ送って、一応招待制にしたんです。そうすると、そのメッセージを受け取った友達の友達も一緒に連れて来てくれるんですよね。「なんかやってるらしいよ、行ってみよう」と。

山本:マークさんと、どういう話をしてどういう手法でインスタレーションしたんですか?

mizutama:前日に、どうする?誰とする?って話し合いました。2人ですることに決まったんですが、マークさんが「mizutamaがやってるのなんていうんだっけ?パフォーマンスの」って聞いてきたんで、「インプロのこと?」って答えました。そうしたら、「あ、それそれそれ!」って。マークさんいわく、ペイントで誰かとコラボレーションする時は、線描いて、その次どうするか相手の行動に反応していくらしいんです。その手法と似ている、と。そのやり方でやろうと決めました。いざ始まると、一個一個つくったインスタレーションにマークさんが「ナイス~!」って言って喜んでくれたり。あと、マークさんがその辺でゴミも拾ってきていたんですけど、割れた鏡拾ってきて僕に見せて、「見て、めっちゃコンテンポラリーやで」って言うんです。僕は「うん、そやなー」って言って(笑)。そんな感じでつくっていきましたね。途中からマークさん、面白くてしょうがなかったみたいです。子供をアシスタントに見てもらって、久々に集中してつくるということが。

山本:子育てを一瞬忘れて。

そうそう。そういう要素がありましたね。

中田粥:さっきの動画をもう一回観たいです。どれがマークさんで、どれがmizutamaくんなのか。ブラックライトがチカチカ光ってたのは?

mizutama:あれは完全に僕っぽいでしょう。

中田粥:使い方が変わってた。

mizutama:そう、新技。

山本:日本から持って行ってたのもある?

mizutama:多少は持って行きました。考えずに割と適当に荷物に詰めていって、成り行きでいきました。

──動画再視聴中──


mizutama:映像はマークさんです。マークさんが過去に作った映像を流したり。この辺の鏡とか、すだれとかはマークさんですね。マークさんは僕に音の鳴ることを中心にやってほしかったみたいです。

山本:役割分担してたんですね。あの隣のめっちゃ瓶置いてある場所はなんなんですか?

mizutama:あれは、サリサリストアと言って、小さい商店です。家の下でお店をやることができて、何屋さんにでもなれる夢のような国ですよね。サリサリストアは、ジュースやタバコを売っていて、インターネットのチャージもできます。これは僕ですね。(音のなる装置)

中田粥:かっこいいね。これもいい。

mizutama:これは、マークさんのつくったもの。ペットボトルを切って草の形にしたものを、露店でいっぱい売ってるんですよ。

山本:へー、売ってるんですか?

mizutama:現代工芸みたいな感じでね。それを素材にした作品、フィリピンで何度か見たことあったんです。マークさんもそれを使ってみてました。

山本:でもペットボトルってことは触ったら手切れそうですよね。

mizutama:意外と柔らかいんです。

山本:ほんまに現代工芸ですね。元々は7upですか?

mizutama:そうそう。マウンテン・デュウとか。

山本:このインスタレーションは、滞在して何日目ぐらいで行ったんですか?

mizutama:ちょうど半分ぐらいの時期ですね。3週間目ぐらいです。

山本:見に来た人はどういう層でしたか?普段からアート見てる人が多い?

mizutama:そうですね、やっぱりアート普段から見てる人が多かった。あと、僕はフィリピンであっちこっちに行くことで、割と音関係のコミュニティに精通している人を多く紹介してもらっていました。そういう人たちを僕が呼んでいました。マークさんのコミュニティとはちょっと違う人たちにメッセージを送ったら、ミュージシャン系の人も来てくれてたらしくて。あと、たまたまステイしていた韓国のキュレーターの人も来てくれていました。

山本:コミュニティの分かれ方ってどうでした?東南アジアでは、特にバンコクとか、あと私がこないだ行ったジャカルタ。音楽系とアート系が別で、それぞれ音楽でもジャンル細分化されたコミュニティがある。

mizutama:クロスオーバーしてましたね。green papayaっていうアートスペースがあります。そこはフィリピンで古いアートスペース。2000年ぐらいからやっているらしいです。ピーウィーという50代のアーティストがオーナーで、今運営はマーブという若いアーティストが担ってます。そこはバンド系がイベントに出たりもするんです。ポストロックとかも。でも、音楽系でも、中にはコンセプチュアルなことをやってる人もいる。あるパンクバンドのボーカルが、green papayaでライブペインティングをぐわーってやってました。その絵、マークさんが帰りにもらって「やったー!」って言ってたんです。「それ、なんなの?」って聞いてみました。マークさんも小さい頃にキリスト教の学校に通っていて、きれいに塗りましょうって教えられる塗り絵があったらしいんです。それに、はみ出して色を塗るっていうのがポリティカルなパフォーマンスになるんですよ。そのパフォーマンスをやっていた人がパンクを歌う、そのパフォーマンスをアート系のマークさんが見てる、っていう。

green papaya webサイト
http://www.greenpapayaartprojects.org




山本:なるほど。その塗り絵、公の場ではまずい?

mizutama:どうなんですかね?そこはアート関係者しか来ないです。宗教のある環境で生きていて、その反発でカウンターカルチャーに向かう人は多いらしいです。マークさんもそうで、反発からストリートアートに行ったと聞いてます。あと、アートやってる人って、なんだかんだ食うに困らない家の人なんです。やっぱり高度な教育を受けているし、大学に行ける。日本とは違います。大学に行ける、アートやる、ってだけでまずは金持ち。

山本:では、その後のパフォーマンスやイベント出演はどうでした?

mizutama:では、あの変なフライヤーのイベントを。


facebookイベントページ
https://www.facebook.com/events/424249671239895/




中田粥:mizutamaくんに似てると思った。(フライヤーに掲載された顔のこと)

山本:Facebookのコメント欄に、「mizutamaくんかと思った」って誰かが書いてましたよね。

──動画視聴中──


山本:これがmizutamaくん?

mizutama:そうです。

中田粥:クール。

mizutama:現地ではUSBファンとかが安いので、いくつか買ってそれを使ってみました。一応、パフォーマンスに向けて日々部屋でこういう装置をつくってみたりしてましたね。結構反応良かったです。結構騒がしい会場やったんで、静かなことをやるのはどうかな?とも思ったんですけど、みんなじっと見てくれてました。あと、これは帰国直前だったので、告知期間も長かった。みんなそれなりに楽しみにしてくれてたみたいです。音楽寄りのアーティストも出てたんですけど、音楽とアートとの距離が近い印象でした。音楽系の人たちもそれぞれ友達にアーティストがいっぱいいるし。

山本:帰る直前とのことですが、帰国1週間ぐらい前ですか?

mizutama:いや、3日前ぐらいです。もうちょっと帰国が遅かったら、もう2つぐらいイベントに出ることができたようなんですが。


日本との壁

mizutama:よくフィリピン大学あたりを散歩してたんですけど、大学の露店でDJやってたんです。そこでかかってるトラックが今最新のヒップホップ。去年行ったときは、その露天のDJもなければ、最新のトレンドが街で聴こえてくることがなかったんで、すごい速さで発展してるみたいですね。

山本:ヒップホップが強いのは予測してたんですよ。アメリカに占領されてたし。あと、Caliph8っていうヒップホップのアーティストは知ってたんです。Caliph8は、海外からも呼ばれるようなDJで、MPCでライブでトラック作っていくっていう。でも、それ以外の、今回mizutamaくんが会ってきたようなアーティストがいるっていう情報がぜんぜん見えてこなかった。みんな英語話せるし、簡単に情報が相互に送受信できそうやのに。なんでなんでしょうね。




mizutama:一人だけ、大阪に行ったことあるっていうアーティストと会ったんです。でもその人は、ナイトワックスっていうレゲエバーには行ったと。向こうからもこっちのサウンドアートやアート系の情報がわからなかったみたいです。あと、ビザが難しいんです。ファウンデーションなどに招聘してもらったらビザが出ますが、壁が高い。日本に来たことがあるフィリピン人は、日本に親戚がいる人、アーティストとして招聘された人、そういう人に限られてきます。憧れの地らしいですね。一番近くて行ってみたいところ。

山本:なるほど。でも私は「日本への憧れ」みたいなのって苦手と言うか。日本から来たって言うだけで「私日本好きなんです」って言われると、引いちゃうんですよ。その作品や表現の本質を好きになるのか、日本っていう側の部分が好きなのか。

mizutama:98Bのあるエスコルタストリートで、ブロックパーティーっていうフリマみたいなお祭りがあったんです。奥さんが床屋をやってみたんですけど、日本人に髪の毛を切ってもらいたい人がいっぱい来て大変でした。モデルっぽい人も来たりして。ある面では、友達も出来やすいし、「日本から来た」って言うことで良い事も多いですね。

山本:私が日本好きじゃないから海外をウロウロしているっていうのもあると思うんですけどね(笑)。海外で日本のことあまり話したくなくなると言うか……。まあでも結局、アジア行き始めて最初のほうに知り合った、単なる日本ブランド好きの友達とはだんだん疎遠になってきたりしてます。

──mizutamaくんが現地で触れた社会問題などについて話した後──
※web上では記載しづらい話なので割愛します。



山本:取材をしにアジアへ行ったときに、たまに「なにしてるんやろう」と思うことはあるんですよ。ふと街中で物乞いの人たちを見たり、ゲットーのようなエリアを通ったとき。東南アジアでは、アートやれる人って金持ち。そういうとき、ドーンと凹んでやる気が失せるんですよ。

中田粥:アーティスト側に対して?

山本:いや、自分が本当に伝えないといけないものは、アートなのか?ってすごく考えるんですよ。

mizutama:それに関して言うと、僕は子供がいるじゃないですか。子供と一緒に家族でダウンタウンを歩くと、子供持ってる親同士って特別なコミュニケーションが生まれるんですよ。こちらも子供がいて、向こうにも子供がいたら、お互いに「Hi~」と挨拶交わして。気軽に話す事ができるんです。この動画、ダウンタウンを歩いてるんですけど、ここは良く歩きました。おばあちゃんとか、おばちゃんがいてて、世間話して。このあたりの人はコミュニティで生活していて、経済格差はあってみんな貧しいかもしれないけど、こっちはこっちで幸せに暮らしてるっていうのが間近に見えましたね。

山本:次はいつ行くんですか?

mizutama:5月ぐらいに。カルナバルという演劇のフェスティバルが開催される予定なんですが、友達の武田力くんが、フィリピンでつくった作品を発表できそうとのことです。主催しているJKっていうアーティストが大阪に留学した事もあって日本語結構話せるんです。それは見に行っておきたいなと思ってます。

カルナバル・フェスティバル facebookページ
https://www.facebook.com/karnabalfestival/

武田力によるフィリピン滞在記『exchange』(note)
https://note.mu/exchanger




山本:5月のいつ頃か、決まってます?

まだ決まってないみたいなんです。まあなるだけ早く行きたいですよ。寒いし。

山本:5月は別に日本寒くないでしょう。

mizutama:寒いですよ。

山本:比べたらね。